驚天動地の呪い㊺
「つまり、人が人である限り、劣等感はいつになっても付きまとうもの……ってデュバラさんは言いたいんだね?」
小紋がデュバラの瞳をジッと見つめると、デュバラは巨木のように仁王立ちになり静か顎を下ろした。
「そうだ。だからこそ私は、もしかするとそなたらの能力に一生負い目を感じ続けて生きて行くのかもしれぬ。だが、私はそれでも良いと考えている。なぜなら、それこそが人間だからだ。私はただ、これからも私の生まれ持った能力を活かし、それをただひたすらそなたたちを超えられるようになるまで精進してゆくのみだ」
いかにも武術の探究者たるデュバラらしい物の言い様であった。
だが、二人は分かっていた。人類が皆、一様にそのような考えに至らないことを。そして、その至らなさこそが人類という自然の生み出した有り様であるということを。
「始祖ペルゼデールは、それを分かっているのだ。我ら第五世代人類であるホモサピエンスがこの星を席巻して以来、何度も同じ栄枯盛衰を繰り返している様を観察している。だからこそ、始祖ペルゼデールは第五世代の人類をリセットしようとしているのだ」
「ということはつまり、デュバラさんは、このウィルスがばら撒かれた裏には、その始祖ペルゼデールとかいう不思議な存在の力が働いているって思ってるってわけ?」
「うむ。さもありなん」
※※※
焦りを感じていたスミルノフは、博士一人をアジトに残し、フューザー・アルケミスト社の本社を置くマンハッタンの摩天楼の一画へと赴いた。自分が撒いたウィルスの効果により、自らの人類リセット計画が派手に混沌を迎えてしまったことへの懸念が、彼をそうさせているのだ。
「君が墓荒らしと呼ばれるのも、まんざら間違ってはいないようだな。なあ、スミルノフ君。この間、君が宣言した通り、あのウィルスをばら撒いたことによって世界はまさしく混沌に包まれた。だが、これでは我々も商売あがったりだ。経済が破綻するまでなら兎も角、全ての人類がご破算になってしまっては、元も子もない」
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