偽りのシステム253
ああ、なんと言うことだろう――。
あのセリーヌ・エスロッサ・ヒューデカイン嬢は、アイシャの清らかなる威光に当てられて、より建設的な思考を取り戻したにもかかわらず、奇しくもアイシャの女王蜂の能力に当てられて破滅の道を辿ってしまったのである。
それを目の当たりにしたアイシャが、当然心を痛めぬはずがない。
彼女は、自らが純粋に走り抜けた行動によって、結果的にエスタロッサたちの心を鷲掴みにした。
しかし、彼女が遺伝子レベルで受け継いだ女王蜂の能力によって、さらなる悲しい結果を生んでしまったのだ。
「そ、それで……それでアイシャは、今どこに居るんだ!? なあ、エナ!?」
正太郎は、エナの肩をゆすった。いや、ゆする素振りをした。
するとエナは、また大きな瞳からボロボロと涙をこぼしながら、
「アイシャさんはね、アイシャさんはね……」
「だから、アイシャはどこに行っちまったんだ!?」
「う、ううん。そう、アイシャさんは……また、カプセルの中に引きこもってしまったのよ。あなたのペンダントのカプセルの中に、自ら閉じこめてしまったのよ……」
「なんだって!?」
正太郎は、自ら首から下げられたペンダントトップに手を添えた。この銀色の小さな玉の中に彼女が帰ってしまったのだという。
「ショウタロウ・ハザマは見ていないと思うけど、アイシャさんが再びこの世界に与えられた身体は、それはとても奇麗な
「
「ううん、勘違いしないでね。いくら融合種だとは言っても、アイシャさんの融合種の姿は、それは奇麗な……桜色にキラキラ光るとても美しいものだったの」
「あ、ああ。そういえば、俺が気を失う前にだが、何となくそういったものを目にした記憶がある。そうか、やっぱりあれが、アイシャだったんだな」
「そうよ。そして、いくら融合種になったとは言っても、融合種は自在に元の人間の姿に戻ることが出来る。そう、つまり……アイシャさんは、あなたに再び会えるというという最大の目的が叶えられるにもかかわらず、女王蜂の能力に悲観して、自分自身という存在をこの世界から隔絶せざるを得なかったのよ……」
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