偽りのシステム195
エスタロッサは後悔していた。こういった状況で、他の隊の者たちの意識を操る行為は、他者の感覚を閉ざしているのも同然である。いくらエスタロッサが優秀な指揮官兼パイロットであっても、多方面から来る困難に対する場合は、やはり各自の意識を活用した方が効率が良い。
「し、しかし。もしここで、集中意識プログラムを解いてしまえば、この中隊の無駄のない統率の取れた動きがバラバラになってしまう……。こういった場合は、各中隊、各小隊ごとに指示系統を任せて戦わせた方が良いはずなのですが、しかし……」
彼女は迷っていた。
これまで、彼女は集中意識プログラムによって、ここに居る七個中隊の全ての兵士の意識を操っている。それをすることで、この三百五十機配備されているイシュトール・イシュⅣ型の効率の良い動きが表現されている。
しかし、エスタロッサは考えていた。
「もしかすると、こちら側が集中意識プログラムを解かせることが敵の目論見なのかも知れません。確かにそうすれば、こちら側の統率力は38パーセントも削がれてしまいます」
人は欠陥の多い生き物である。その欠陥となる部分を出来るだけ削ぐために生み出されたのが、集中意識プログラムである。
だが、メリットが生み出されれば、同時にそこにデメリットも生じてしまう。これがこの世の中の道理なのだ。
あのデタラメな亡霊たちを仕掛けて来た敵は、間違いなくその道理を理解している。
「もしこれが、第十五寄留の呪いの遺産だとするのなら、これは由々しき事態です。こんな力技ではない部分で私たちを苦しませてくるなんて、なんて厄介な……!!」
無論、エナ・リックバルトはこういった意味を含めて、このジャガイモの亡霊たちを送り込んできた。
とは言え、エスタロッサ中尉とて、数々の戦禍を潜り抜けて来た猛者である。言うなれば、並の士官などではない。彼女は早々とあることに気づいてしまったのだ。
「むむ? 何かおかしいですね。こうしてデータを見ていると、戦闘の激しさと被害状況に妙な違和感があります。これはどういうことなのでしょう……」
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