偽りのシステム105


「その通りだよ、エスタ坊や。ここからが俺たちの腕の見せ所だ」

 言って、エリケンは鼻息も荒く、東側峡谷の映像を拡大させ、

「第二に、この峡谷を突破してゲッスンの谷に辿り着かねばならん。そのためには、こちら側の一点突破作戦の効率を鑑みて、我が大隊は中隊の再編を行う」

「再編成ですか?」

「そうだ。今までは各中隊がそれぞれに違った役割を担っていた。だが、これからは各中隊のそれぞれが遊撃の出来る編成で行かねばならない」

「なるほど。ここまで戦力を減らされれば、その方が効率的ですね。ですが大佐殿。再編をしてしまうと、今まで培ってきた各人のコミュニケーションに支障を来すのではないでしょうか? まして、改めて再編するとなると訓練に費やす時間が……」

「ハッハッハ、何を言うかエスタ坊や。俺たちは肉体の半分を機械に変えたエリート部隊なんだぞ。そんなものは補助脳に仕込まれたコミュニケータープログラムを使用すれば何の問題もない」

「そ、そうでしたね。私たち第十八特殊任務大隊の全員に仕込まれたコミュニケータープログラムがありました。このプログラムは、性格や能力から来る感情のズレを補正してくれているのです。より機械的に、より効率的に互いの指示系統を制御することによって、このプログラムは最大のパフォーマンスを打ち出せるのでしたね」

「生きるか死ぬかの選択が常である戦場において、保身から来るよこしまな感情と伝達ミスこそが障害となる。それを機械的に制御するのがコミュニケータープログラムだ。これさえ備わっていれば、即席の再編など取るに足りん心配だ」

「ええ、そうでした。まだ、実戦で使用したことが無かったものですから、その存在すら失念しておりました。それで大佐。再編とは具体的にはどのように?」


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