偽りのシステム75


「そ、それも以前に窺っております……」

「そうだ。だからよ、俺は軍に入隊したんだ。親のを使ってでもな。奴らに復讐するために。奴らの全てをこの世界から駆逐するために……」

「そ、それも存じております……」

「だがよ、現実はそう甘くねえ。奴らはこの世界で最凶と謳われる生き物だ。いや、化け物と言っても過言じゃねえ。まだ新政府すら成立していなかった各国が資金を出し合って作った仮の軍てのはよ。そりゃあもろい軍隊だった。だってよ、アイツら凶獣が一匹に対して、俺たちはフェイズウォーカー10体で立ち向かっても敵いやしなかったんだぜ。それじゃあやけっぱちにもなるわよ」

「ええ、あの時代……まだまだフェイズウォーカーの性能も、それを支える人工知能の性能も発展途上でしたからね」

「だからなんだよ。俺はこの力に賭けたんだ。このヒューマンチューニングで得られる未知の力に、な」

「大佐……それは私も同じです。こんな話は、ここで何度も話し合ったか忘れてしまいましたが、私も自らの無力さを切に感じ、そしてヒューマンチューニング手術を受けました。ですが……」

「まあ、そういうことだ。強さには際限がねえ。俺は改めて知ったよ。俺たちのようなボンボンには高けえ授業料だったのさ。俺たちのように、何の苦労も知らずに生きて来た者には無かった概念だからな。そう、俺の一族の誰かが言ってたっけ。金の欲には際限がねえって。どんなに儲けても、どんなに金持ちになったとしても、どこか不安でしょうがねえって。だからそれ以上に金を儲けたがっちまうってな」

「それは私たちも同じだったのでしょうね。強さには際限がないってことを。そして、不安で仕方なくって、つい規定以上の改造を受けてしまった……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る