偽りのシステム㉙


「そうよ。あなたは孤独でいるようで、まるで孤独なんかじゃない」

「エナ……」

「確かにあなたは、この世界にしか生まれ出て来なかった不具合バグなのかもしれないけど、あなたという存在が生まれ出て来てくれたお陰で直接関わり合ったあたしたちにとんでもない影響を与えてくれたわ。そしてその逆もしかりなのよ」

「逆もしかり?」

「そうよ。つまりね、あたしを含めたあなたと関わり合った人たちは、みんな、あなたという存在を必要としているのよ。たとえそれが、あなたの記憶から消去されてしまった人たちだったとしても、ね……」

「記憶から消されちまった人たち……だと?」

 正太郎は首を傾げた。

 その時、エナは小さな額に眉間のしわを寄せて納得する。

「ショウタロウ・ハザマ……。まさか、いいえ、やっぱり……あなた、今ので、小紋さんのこと?」

 言われて正太郎は、エナをじっと見つめるや、

「こもん? 誰だそれ? 女なのか、男なのか? そいつと俺ァ、どんな関係だったんだ……?」



 ※※※


 突如、上空に現れた浮遊戦艦に交渉を持ちかけられた悪童シュンマッハは、例を見ない相手との会談を前に気分がたかぶっていた。

「どうだ、見たか!! あの未知なる存在の浮遊戦艦とて、この俺様を見込んで交渉を持ちかけて来たのだ。愚鈍なる者どもよ、その意味が分かるか!? そうだ、なぜならその理由は、この俺様が宇宙一限りなく偉大なる存在だからだ。必要不可欠な存在だからだ! いくら科学力が我々人類の先を急ごうとも、その中身は偉大なる人物の双肩にかかっている! ゆえに、この俺様は、今後の世界……いや、宇宙全体にとって掛け替えのない存在たる証しというわけだ!!」

 ひれ伏す側近たちに向かって飛沫を散らすシュンマッハである。彼の勢いはまるで留まることを知らぬ。

「良いか、皆の者!! 交渉は対等、いやそれ以上でなければならん!! この俺様にあっては、どんな科学力も敵わんというわけだ!! 俺様の生まれ持った〝神通力〟によってな!!」



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