偽りのシステム⑪
「人工ビッグバンだと!? なんだそれは……」
正太郎は、その無音の爆圧に耐えながらもエナに問い質す。
「ねえ、覚えてる? あなたがあたしを助けようとして入って来た、あの洞窟の出来事?」
「もしかして、ブラフマデージャの隠し洞窟のことか?」
「ええ、そう。あの第十五寄留の地下深くに隠してあった、小宇宙養殖施設での一件……」
あの時、正太郎は、自分の命を顧みず助けてくれたアイシャ・アルサンダールの悲しみから立ち直れず、その時に偶然見つけてしまった。あの迷い込んだ隠し洞窟での出来事である。
「あの時、あなたも見たでしょう? いくつもの小さな黒い塊を?」
「ああ、見たさ。もしかして、これがその時の?」
「そう、確かにここは仮想空間の中だけど、理屈は同じよ。システムが仮想空間に造り出したのか、それとも現実世界に造り出したかの違いなだけで……」
「て、てえことは……」
「そういうこと。システムは、造り出した宇宙の時間も空間も支配できる。つまりは、その目的の物をピンポイントで作り出せる」
エナが言い切った瞬間だった。目の前の小宇宙は瞬く間に空間を維持し、目にも止まらぬ速さで星の集合体が形成され、そしてその星々たちは滅びと再生を繰り返して行く。
そしてそこそこの安定を維持したところで、小宇宙は爆縮をして消えて無くなった。だが、その場に何やら一人の人影が立っているではないか。
「あ、あれは……!?」
「そう、正にあれがシステムが作り出した目的の物……」
「あ、あれは……もしかして、俺なのか!?」
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