浮遊戦艦の中で286


「アヴェル様、そのことで御座いますが……」

 アフワンは、かしずきながらアヴェルに近寄ると耳打ちするように言った。

「アイシャ様は、どこか他の次元世界で生きておられますまいか……」

「なっ……!?」

「アヴェル様。始祖ペルゼデールは、このヴェルデムンド世界に大多数に影響のある人物を次々と召喚させております。もしやもすれば、アイシャ様も……」

「し、しかし……。アイシャはもうこの世の者ではない。そのような存在を、始祖ペルゼデールはわざわざ集わせるものだろうか?」

「その通りです。この世界のアイシャ様はもうご存命に御座りません。ですが、今現在のように、始祖ペルゼデールの正体も目的も分からぬ状況ならば、ひとつ鎌を掛けてみるのも手段の一つかと……」

「なるほどな。我ら黄金の円月輪は、いかにも始祖ペルゼデールに従順であるかのように見せかけて連綿と組織を存続して来た存在だ。だが、その始祖ペルゼデールという存在に直接顔を合わせたわけでも、その意見を直接聞いたわけでもない

「御意。ならばこの際、様々な鎌を掛けて相手をおびき寄せると言うのも手立ての一つかと存じます」

「なるほど。まだこの私の他の次元世界の存在とはやり合っておらん」

「御意。しかし、アヴェル様ほどの人材ともなれば、それは時間の問題かと存じます」

「うむ。その他の次元世界の私がここに集った時こそが好機と言うことだな?」

「御意。そこで他の次元世界のアヴェル様と結託し、他の次元世界への扉を開かせる方法を知る手がかりを知ればよいと言うわけです」

「うむ。アイシャだけではない。もし他の次元世界に存命ならば、親父殿と直接会って話し合うことも出来るかもしれぬと……」

「御意……」


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