浮遊戦艦の中で221



 しかし、その不安はこの先の結果を生む――。

 人工知能に答えを見出そうとしていた彼らだったが、意外にもこの状況で光明が見えたのは彼ら人間の方であった。

「剣崎大佐! たった今、第一〇五部隊の隊長、セイン・ロック少尉から通信が入りました。どうやらセイン少尉以下、一〇五部隊が待機しているすぐ近くの場所に、擬態化した凶獣を複数体確認したそうです!」

 ミコナス准尉は、目を見開きながら剣崎の方を振り向いた。

「凶獣が擬態化だと!? ミコナス准尉。ロック少尉回線をこちらに繋いでくれ。もっと詳しい状況が聞きたい」

「了解しました。ロック少尉、聞こえますか!? 剣崎大佐が、状況の詳細を伺いたいとのことです!」

 ミコナス准尉が回線を艦橋のメインモニターに移すと、金髪の青い目をした若々しい士官が緊張した面持ちで画面上に映った。

「は、はい、報告いたします! 我々一〇五部隊は、本艦の後方三百メートルに位置して第二陣の周回を任されておりますが、この場所の巨木の幹に、おおよそ確認出来るだけでも五十体近くにも及ぶ凶獣が張り付いております。それらは皆、巨木の幹の色と紋様に体を擬態化させており、レーダーや熱感知センサーといったものにも干渉しておりません」

「何!? それはどういうことだ、ロック少尉。レーダーや熱感知センサーの類に反応しないのに、なぜその存在が分かった? 貴官の言いようでは、対象が擬態化しているのにもかかわらず、まるで目に見えているようではないか。それはどういうことなのだ?」

「は、はい。それが私にもわけが分からないのです。我々一〇五部隊も他の部隊同様、機械センサーの類にも反応していなかった場所からの攻撃に備えて、この暗闇の中を目視で確認していると、いつの間にかそこに凶獣が居ることに気づいてしまったのです」

「いつの間にか気づいてしまっただと?」

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