浮遊戦艦の中で188
「良いかね、フーリンシア君。君たちが作り出した人工知能〝火之神〟はかなり優秀だ。しかし、どうやら事前予測の根底に問題があることに俺は気づいた」
剣崎は防具を脱ぎ上半身裸になると、滴る汗をタオルで拭いながら彼女に言った。
「根底? 事前予測の根本理念という意味でしょうか?」
彼女は訳が分からないと言った表情で剣崎を仰ぎ見ると、一旦作業の手を止め、彼の傍にいそいそと小走りに駆け寄る。
「お、おい。あまり今の俺に近付くな。かなり汗臭いかもしれんからな」
剣崎が年甲斐もなく顔を赤らめて彼女を制しようとするが、
「そんなこと、生身の人間なのですから当然のことです。むしろ、そういうのは私にとってご褒美……」
「ご褒美だと……?」
「い、いえ、それはこちらの話……。ですから、大佐。私は真剣にお聞きしたいのです。なぜ、私の作り出した人工知能の根本に問題があるのでしょうか?」
「ううむ、それだったな。先ずはそこから話さねばならんか」
剣崎は拭いていたタオルを首に掛けると、先ほどまで〝烈火〟を相手に使用していた長薙刀を再び手に取った。
「いざ、フーリンシア!!」
剣崎は大声で彼女の名前を叫ぶや、その薙刀の先をフーリンシアの顔の目の前に突き出した。
「な、なにをなされるのです、大佐!? そんな危ないものを……!?」
突き出されたビームの刃を直前にして、さすがのフーリンシアも声が上ずってしまう。
「これなのだよ、フーリンシア君。君の今の感情こそが、君の造る人工知能の根底に足りぬものなのだよ」
「え? これが……」
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