浮遊戦艦の中で129

  ※※※


 リゲルデ掃討隊は、総力戦で女王部隊の討伐を仕掛ける算段である。

「我らの編隊は、強襲陸戦艇〝ヘルマンズ・ワイスⅤ型〟三艇と、新型フェイズウォーカー〝シグマ・ウェルデ〟五機。そして旧型の流用である〝ヘスマン改〟が十機と、〝白蓮改―改〟が三十機のみの弱小部隊だ。こんな戦乱期の旧態依然とした兵器が主体で、女王親衛隊に挑むのは酷というものだ。だが……」

 リゲルデはそこで言葉を切って、ホログラムスクリーンに以前にシミュレーションした戦闘モデルを指し示す。

 ブリーフィングルームに集った各小隊の隊長格の兵士たちは、真剣な眼差しでそれに集中すると、

「だが、このような旧型の機動兵器であっても、針の穴を通す勢いで一点突破すれば、必ずや目標物を撃破出来る」

 リゲルデが示した戦闘シミュレーションには、一点に集中された〝ウィク・ヴィクセンヌ〟の撃破された様子が映し出されている。

「し、しかし……」

 その映像を目にした一人の兵士が手を上げて、

「しかし、リゲルデ中佐。これでは先行した同朋の機体のほとんどが犠牲になってしまうではありませんか!?」

 それを受けてリゲルデは、

「そうだな。それは貴様の言う通りだ。しかし、それは大した問題ではない。我ら女王討伐隊の目的は、あくまであの目障りな女王をこの世から抹殺することだ。もしそれが達成出来なければ、貴様たちに帰る場所などない。このまま怖気おじけづいて故郷くにに帰ったとしても、貴様たちは女王を討伐出来なかった腰抜けと烙印を押されるか、もしくは女王を故意に見逃した反逆者とみなされて有無を言わさず軍事裁判にかけられることになる。そうなりたくなくば、貴様たちの部下を騙してでも特攻させるのだな」

「なっ……!?」

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