浮遊戦艦の中で120


 サガウルら親衛隊は、その名の通り女王を守るために組織されたエリート集団である。サガウルは、その中でも手練れの兵士を五十七名に厳選し、このおとり部隊に割り当てたのだ。

「サガウル殿。剣崎大佐には黙っていましたが、わたくし共の部隊はウィク・ヴィクセンヌとの距離をとった後、程なくして戦闘の狼煙のろしを上げることに致しましょう」

 マリダは、サガウルを補給車両の作戦室に密かに呼び寄せると、毅然とその言葉を吐いた。

「さすがは陛下で御座いますな。無駄に時を費やすのであれば、こちらから我々の部隊を敵に見つけ出させ、それを迎え撃つ算段とは……」

「ええ。最初からわたくしはその考えでした。ですが、剣崎大佐や他の方々がそれを許すはずが無いと思い……」

 そこでサガウルは、マリダを制するように、

「皆まで申されますな、陛下。されば、このサガウル以下、親衛隊の全ての者たちは陛下と心同じ気持ちで事に当たる所存に御座います。もとより、我々も陛下が如何いかなることを仰られても良いようにと、どんな事態にも対処できるお膳立てをして参りました」

「……重ね重ね気苦労をお掛けします、サガウル殿。あなたのそのようなお気遣いがあればこそ、このマリダも立つ瀬があるというものでしょう」

 親衛隊長のサガウルは、かしこまった態度で彼女に一礼をすると、即座に部下に指令を下す。

「皆の者、良く聞けい! これから我々女王親衛隊五十七名は、女王陛下と共に討伐部隊の迎撃に出る。皆も知っての通り、あと数日でこの世界は〝緑の七日祭り〟を迎え、その後には否応なしに氷の世界へと変貌する。ゆえに、敵は必ず〝緑の七日祭り〟の前に我々を討ち取りたいと考えることは必至。だが、我々はその先の先を読んで敵をおびき寄せる作戦に出る! 詳細な作戦は追って通達するが、各自心しておくように!! 以上だ!!」


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