浮遊戦艦の中で111

 一同は怪訝な表情で慌てふためいた。マリダは、女王自ら迎撃に出ることに何らためらいが無い。

「何を仰っているのです、陛下!! ここで陛下が御自ら出撃されることなど……!!」

「だからそうすると申し上げているのです。良いですか、剣崎大佐。敵の目的は、文字通りこのわたくしを闇に葬り、そして反逆ののろしを上げる勢力を掃討することなのです! そして私どもの目的は、羽間少佐をさらった浮遊戦艦に取り付いて、何とかその技術を応用し、地球との懸け橋を取り次いで勢力を拡大することなのです。現在、往来を閉ざされた地球との接点を結べば、何らかの期待が持てることは明らか。あの羽間少佐の専用機体である烈風七型の制作者である桐野博士の所在さえつかめば、烈風七型の復元への期待すら望めるのです。そういった私どもの目的を果たすためには、ここで二手以上に分かれて行動するのが一番なのです! それには、格好の囮となる存在が必要なのは皆様方も容易に想像できるはずです!」

「だ、だからと言って、何も陛下がお出にならずとも……」

「くどい!! ここまで申し上げても納得なさらぬか!? 良いですか、剣崎大佐? 先ほどあなた方は、このわたくしに、世界の為なら上から物を申しても良いと仰ったはずです! ならばそのお言葉通り、今のわたくしの申し出た作戦を素直に受け入れるべきだと考えます!!」

 マリダの迫力は、今までにない類を見ないものであった。

 さすがに上から物を申せと言い出したからには、剣崎大佐と肩を並べた他の将校や家臣たちも唾を飲み込むしかない。

「いやはや何とも……。こうも我々に都合の良い意味で言葉を逆手に取られましては、私めどもは陛下のお言葉に従うしかないというわけですな……」

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