神々の旗印245
「お、お前は確か、アルバトロス一家の……!? 〝かなちょろのエリック〟!! お前、生きていたんだな!?」
そう、正太郎にはその顔にとことん見覚えがある。以前にアルバトロス一家の若頭ドン・ヴィローシェと取引をしたときに、彼の手下の筆頭を務めていた男だからである。
その取引は、ヴィローシェの裏企みにより、取引物を横取りされそうになるが、結果として破談。ヴィローシェや、以下その手下どもは正太郎と烈太郎の返り討ちに遭い、その殆どが生死の境目を彷徨った、というわけである。
その時に事実上のヴィローシェとの橋渡しをしたり実務をこなしていたりしていた人物がこの男と言うわけである。
正太郎の言った〝かなちょろのエリック〟の
「へ、へえ。あっしの名を、このエリック・エヴァンスキーの名を覚えて下さりやしたか。流石は
「墓石売りって……お前。それ俺を褒めてつけた仇名じゃねえぞ。まあ、それにしてもお前、よくあの状況で生きてこられたもんだなあ」
「へえ、そりゃもう、あっしはしぶといだけが取り柄でして。
「なるほどねえ。ということは、あれからお前にも色々あったってわけか……」
正太郎は、エリックに声を掛けられるや否や輸送車両に乗り込むと、席を隣同士にして話に花を咲かせた。
「んで、奴はどうしてんのよ? あのとんちんかんな若頭はよ?」
「こりゃまた手厳しいですな、ハザマどんは。ええ、あの方は今でも生きておられますよ」
「ええっ! あれで生きてんのか!? そりゃあすげえな」
「いえね、生きておりますとはいうものの、あれから一向に意識は戻ってきやせん。なにせ、あの〝スズキダブルエックス〟を使用してしまってからは……」
「ああ、そういうこと。つまり植物状態ってことか。まあ、使用上の注意を取り違えた末路だわな」
「へえ、面目も御座いやせん。強欲で意地っ張りで、自己顕示欲のお強いお人でしたが、根は良い方だったのですよ、あのヴィローシェというお方は。この世を良き世の中に作り替えるといつも意気込んでおられましたから……」
「まあ、意気込みだけは悪くは無いんだが、少々おつむの方が……ね?」
「ええ。あのお方は、元反乱軍の少佐までお勤めになっておりやしたが、それも親類縁者のコネクションによるものだともっぱらの噂でした。それをどう取り違えたのか、自分は世の中を変えられる男だと言い出すようになって……」
「そうか。お前も元々は反乱軍の一兵士だったっけな。確か、諜報部付きの少尉さんだったか……?」
「ええ、その通りでやす。あっしは元が〝草〟と呼ばれる駐在諜報員の役目でして、ヴィローシェ様は諜報部付きの裏方の事務方将校でした」
「なるほど……。ん、まてよ。てえことはお前!?」
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