神々の旗印206


「ううむ、もちっと生きておるかのう……? 二百五十年だったか? それとも三百年だったかえ?」

「な、何ぃ!? 三百年だと!? うわははははは、あんまり笑わせるな! こちとらあばらが折れて、息を吸うだけでも片腹痛いってのによ!!」

「けっけっけ。信用せんのも無理もあるまいて。人は皆、見た目と経験則だけで判断する。しかし、わしには常識は通用せんよ。そしてこれからの時代、常識など論外じゃ」

「な、何言ってやがる、このババア!! 気でも狂ってんのか?」

「けっけっけ。ならば問う、若造よ。この世の中はいつも同じ過ちの繰り返しじゃ。それは何故じゃ?」

「な、なんだよ藪から棒に! 婆さん、顔に似合わずいきなり哲学的ななぞなぞか何かか?」

「いいや、なぞなぞではありゃせんよ。儂は至極真面目に問うておる。さあ、答えよ。なぜお主らは戦う? なぜ争いごとを止めんのじゃ? なぜ諍い合うのを永遠に続けるのじゃ?」

「そ、そりゃあ決まってんだろ。人間はそういう生き物だからさ。争いが体の中に沁みついてんのさ」

「けっけっけ。それじゃ余りにも常識的すぎるわい。お主に期待した儂が馬鹿じゃったかのう

「な、なんだよ。それが常識だからそう言ってるまでだろ? それ以外に何があるんでい!?」

「けっけっけ。あるともさ」

「そりゃ何さ?」

「寿命じゃよ」

「寿命?」

「そうじゃ、寿命じゃ。人間の寿命は知的生命活動の期間の割に比較的短すぎる。幼児期に物心がついて、少年期を迎え、やっと世の中の判断がつき始めた頃に結婚し、子を産み、そして育てる」

「ああ、それが大凡おおよそのパターンだわな」

「しかしそこには問題がある」

「問題?」

「そうじゃ。人間の青年期は、まだ経験も熟慮も浅いひよっ子じゃ。そんなひよっ子に文字通りのひよこが育てられるものか?」

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