神々の旗印98
フランキスカⅤ型は、その名の通り接近戦に特に秀でた機体である。その大胆で大振りの斧を右腕で構えたフォルムはそれだけで敵を威嚇するほどの威圧感があり、左腕に備わった盾は機体全高ほどもあるがゆえに、恐れ知らずの城壁のような防御を示唆している。
かつてのパイロットであったアストラ・フリードリヒや、イーアン・アルジョルジュは、敵軍友軍ともどもその名を轟かせるほど近接戦闘に長けた兵士であった。それだけに、この機体のサポート人工知能であるマーキュリーの役目といえば、電磁滑空砲を主とした射撃武器での対応になる。
果たして、セシル・セウウェルの姿になってしまった勇斗に、以前のパイロットほどの役目が果たせる出のあろうか。
彼自身が、そう言った思いを抱きながら操縦桿を握ったその時である。
「キ、来マシタワヨ!! 右前方二時半の方向から……二機!! そして、左方向七時の方向から三機!!」
「え、何だって!? いきなり挟撃かよ! 敵機は一機じゃなかったんだな!!」
「仕方アリマセンワ!! 敵ハ、アナタヲ殺しに来ているノダカラ」
「そうだな、マーキュリー。確かにミシェル兵士長の性格なら当然ってところか。ならば、俺は前方の二機を相手にするから、マーキュリーは後方から来る三機を狙撃してくれ! 体勢が危なくなったら、そっちで勝手に弾を
「分かりましたワ。ソレじゃあ、行きますワヨ!!」
どうやら敵となる機体は、ミシェル・ランドンの駆るあの赤いフェイズウォーカーとの混成チームである。スコープで確認出来る映像からするに、赤い機体以外はすべて白蓮改に緑色の羽の生えた不気味な物であった。
「な、何なんだよあれは!? あれじゃまるで無機物と有機物のごちゃまぜ機体じゃないか!?」
「驚いてイル場合デハ無くてヨ、クロヅカ二等兵!! 早速敵方が機銃ヲ撃って来たワ!!」
白蓮改は、近接戦闘型に長けた機体である。それだけに、射撃武器は肩に備わった二十ミリ機銃二門のみである。それだけに、ある程度の距離を詰めなければ有効射程距離に入らない。
「つまり、敵の機体はこちら側のデータよりも数段パワーアップしてるってことだな……!?」
勇斗は言いながら、大型の盾を前方に構えて機銃の弾をやり過ごす。しかし、その着弾した衝撃音と飛び散る火花で心が折れそうになる。
「何ヲビビッているのデス、クロヅカ二等兵!! ソレデモ男デスカ!? 付いテルモノガ有るのダッタラ、シャキッとしなサイ!!」
「わ、分かったよ、マーキュリー……。お前、いきなり下品な言い方をするんだな。だけどさ、今の俺は付いてるモノが付いてないんだぜ?」
「ソンナ屁理屈ナド言わなサンナ!!」
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