虹色の人類84

「な、何ィ……!? この俺が、このぶち壊れた球の中の存在だっただと!?」

 正太郎は呆れて二の句が継げないでいた。いくら何でも話が突拍子過ぎる。いや、いくら何だってそんなことが信じられる筈がない。

 だが、

「さすがのショウタロウ・ハザマでも、ここまでの話を信じてもらえないようね。でもね、これは現実の話なの。厳然たる事実なのよ。それが証拠に、あなたはあの〝黒い嵐の事変〟で死にかけたのに、無事にここまで再生したじゃない。ホント言うと、あれはね。再生したのではなくて、死にかけたあなた自身の意識と、その破裂して無くなってしまった宇宙の中で育ったあなたの肉体を融合しただけなのよ」

「は、はあ?」

「まだ理解出来ていないのかしら。つまりね、あなたの目の前で消えてなくなってしまったその宇宙というのは、あたしたちのこの世界を模して造られた養殖場のようなものなの。そう、細かい時間やシチュエーションを設定することによって生み出された小さな宇宙そのものなのよ」

「も、もしかして、これがあの禁断の発明とまで言われた〝培養コロニアリズム〟の応用なのか!?」

「ふうん、さすがは裏社会の武器商人なだけあるわね。ずばりご明察。全くその通りよ。だけどね、今の壊れた宇宙の中に、あなたと同じ人が存在していたのは本当に奇跡としか言いようがなかったわ。だって、いくらあたしたちの世界を模した養殖場だと言ったって、全く鏡に映したように何もかも同じに出来る確率は天文学的に桁が広がってしまうんですもの。だけど、それを修正出来る神のような存在が居る……」

「それはもしかして、いや、もしかしなくても……、それこそが噂に聞くペルゼデールとか言う……」

「そうよ。その通り。その神技とも言える異業を成し遂げられるのが、ペルゼデール様よ。そう、ペルゼデール様は、あたしたちですら気づくことが出来ないその誤差ですら修正することが出来るとても稀有で崇高な存在。正しく神と言う名に等しいお方なのよ」

 エナは、瞳を輝かして言い切る。

 正太郎は、そんな彼女を茫然とした表情のまま見つめ続けているが、

「いや、しかし、エナ! お前、何で俺が死にかけたことを知っている? いや、お前の情報収集能力でそれを知っていたとしても、何でそんなカラクリまで知っているんだよ!?」


 

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