虹色の人類58

「さあ、市民よ立ち上がれ! 我々は、我々の手によって自らの命とその尊厳を守らねばならない。ここにある軍隊の力を借りずとも、自分自身が自分自身の力で君たちの家族や友人、隣人たちを守ってゆかねばならない。互いが軍隊の力を借りずとも助け合って行かねばならないのだ! それこそ我々人類が自立と共存を示す絶好の機会なのだ!!」

 ジョージ・レイブンデットは、そう言ってくすぶっていた一般市民を鼓舞し、有志を募って資金を集め、かなり使い古した物ではあるものの、軍事用のフェイズウォーカーや、肉食系植物を撃退するための武器を軍からありったけ払い下げさせたのだ。

 第五寄留の市民たちは、まだ政府直轄の軍事体制が整わぬことに不安を覚えていたため、ジョージの口車に賛同して、自らが支払われていた善行報酬をありったけ出し合う結果に至ったのだ。

 無論、結果的に賛同した市民たちにも、ジョージらと同じように善行報酬が支払われることになる。その為、ジョージと初期メンバーらの取り分は、彼らの組織が膨れ上がる毎にうなぎ上りに跳ね上がっていった。

 やがて彼らは最前線に身を構えなくとも、ただ後方でそういった素振りを見せているだけで多額の報酬を受け取れるにまでなったのだ。

 しかし、彼らのそういった目論見は次第に互いの疑心暗鬼を生み出すに至った。なぜなら、その報酬額と危険度との差異が見合わなくなってきたからだ。

「なぜ俺たちが、あんなに躍起になって危険地域に足を踏み入れているってのに報酬が上がらねえんだ? 一番善き行いをしているのは、汗水たらして命を張っている俺たちなはずだぞ!!」

「そうだそうだ! ただでさえ会社から与えられたフェイズウォーカーはオンボロなのに。こんな旧世代の武器を駆使して地域を守り切っている俺たちの方が、断然世の中に貢献しているはずだ! それなのに……!!」

 そういった最前線に送り出された人員の鬱積が積み重なって来たのである。

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