野望の㉜
正太郎が、蔵人という日系人に成りすまして新政府軍の技術部門に乗り込んだ時点で第三段階。そして、ここからが第四段階の勝負どころである。
第四段階の彼の目的とは、
『三次元ネットワークの解放』
である。
ヴェルデムンド新政府軍の兵士たちは皆、ヒューマンチューニング手術を受けたミックスと呼ばれる存在である。
ミックスとは、言わずと知れた生身の人間の能力を残したまま、体の一部を機械化することでよりこの世界で生存しやすい力を取り入れた人々のことである。
そのミックスという存在に欠かせないのが、体の一部分に取り入れた補助的人工知能と自らの脳を直結することで得られた第七の認識能力である。
この第七の認識能力とは、三次元ネットワークという共有ベースによって、それまで溜め込んだ知識や様々な人々の経験、感覚能力を瞬時にフィードバックできる機能を指し示す。
その第七の認識能力を得ることによって、それまで感じ得なかった感覚や認識能力をより平均的に共有し、集団的な意味での人々の能力の底上げが図れるという仕組みなのだ。
だが、これが戦闘などの相対する者同士や、敵軍同士が共有感覚を持ってしまうと戦争どころか、現実的な諍いにすらならなくなってしまう。
何とも皮肉な話だが、この三次元ネットワークという代物は、事実上の戦争抑止が図れるという特性がある。
だがその反面、共通意識や共通感覚を抱き過ぎた集団は、一歩間違えば同じ崖の上から飛び降りてしまうような危険な面も有している。
さらに言えば、三次元ネットワークは現実よりも居心地が良いためか、時々ミックスとなった人々がそのネットワーク上から返って来ず、現実世界で野垂れ死にしている姿も少なくはなかったのだ。
そんな理由から、ネイチャーたる反乱軍は全ての人々を強制的にミックスにしようとする新政府に対して反乱を企てた。
話は逸れたが、羽間正太郎は、反乱軍とヴェルデムンド新政府軍の三次元ネットワークの隔たりを故意に繋げてしまおうという目的で潜入したのだ。
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