戦闘マシンの㉛

 正太郎は、何を思ったのか四方八方飛び交うチャクラムのど真ん中に飛び出した。特殊なチャクラムによる音波攻撃で吐き気を催すほどの頭痛がするにもかかわらず、彼は歯を食いしばって目を見開いた。

「アヴェルよ。要するにやる気の問題なんだよ!」

 そんなことを叫びつつも、彼自身こんな窮地に立たされて精神論を盾に戦っていることが可笑しくて堪らない。彼はこう見えても、相手の動向を分析しつつ理論立てて行動を起こすことが多い。しかし、彼は知っている。その理論立てた起点にやる気が伴わなければ、単なる自動機械人形と何も変わらないことを。

「つまりは、テメェらは四の五の御託を並び立てるだけで、端っからやる気がねえんだよ!!」

 正太郎はレーザーナイフの出力を上げたまま、飛んでくるチャクラムに向かい突進した。夕暮れどきの光を浴びて、黄金のチャクラムが不気味な音色を奏でながら迫りくる。それを、

「えいっ!!」

 と思いきりレーザーナイフを一閃。と同時に下方に転がり込む。するとなんと、別の方向から飛んできた二つのチャクラム同士がぶつかり合い、火花を散らしながら弾け飛んでいった。

「どうでえ! これで二丁上がりよ! 思った通りだぜ。完成された暗殺攻撃なだけに、対象を追い詰める想定しかしてなかったんだろ。それが証拠に、こうやってこっちから攻められるとチャクラム同士がリズムを崩しちまう。なぜなら、お前らの攻撃は俺の故郷くにである日本の鉄道みてえに正確無比のダイヤグラムそのものだからだよ。そういったもんは大抵、攻めに弱い。完成度が高ければ高い程な。所詮人間のやる事ってなあ、そんなもんよ!」 

 ボルテージが上がり饒舌になる正太郎。彼は、さらにチャクラムの飛び交う流れの乱れを感じると、

「せいっ!!」

 一気に人の気配のする瓦礫の陰にレーザーナイフを突き立てる。その瞬間、

「うぐっ……!!」

 瓦礫の中に迷彩色を伴った人影は、正太郎の目にも止まらぬ不意打ちにうめき声を上げながら崩れ落ちた。

「向かってくる奴には容赦しねえ。それが俺の流儀だ、堪忍な……」

 正太郎は言いつつ、またチャクラムが飛んでくる方向に突進する。



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