戦闘マシンの㉓


 とは言ったものの、相手は六人。武器も違えば、戦略的にもかなり不利な状況である。

 正太郎は考えた。俺が俺自身を殺すのであれば、どんな戦略が有効かということを。

(俺はアイツにとって憎い相手だ。それも、ただ憎いだけじゃねえ。過去の経緯さえ消してしまいてえぐれえ憎いのがこの俺だ。この俺さえいなければ、アイツはゲネックのおやっさんの持っている技術や心構えを全て伝授してもらえたと考えている筈だ。それが証拠に、アイツは自分が守らなければならねえ国の最後の砦のこの街を自ら破壊しちまったんだ。つまり……アイツが生きてきた過去を全否定してリセットを掛けてえってことなんだよな……)

 その手の考え方をする人間は、長く生きてさえいれば結構な人数にぶち当たる。正太郎が反乱軍の中枢にいた時は、まともそうな顔をして根っこがそういう破滅的な考えの輩が有象無象見え隠れしていた。

 しかし、それが良いか悪いかと言うのではなく、何か悪い要素が複数重なった時、必然的にそういう考え方に陥ってしまうのが人間なのだ。

 時に、アヴェルの様な絵に描いたような逸材であろうとも――アヴェルにとっては、この世に生を受けて以来才能に満ち溢れていることが極普通であったがために――それを認めてくれるゲネック・アルサンダールという最高の人物にずっと振り向いていて欲しかったのだ。

(てえことはよ、アイツは俺をどうあっても孤独の底に導きてえはずだな。誰にも認められず、誰にも求められることのねえ、どん底の暗闇の中によ……)

 その正太郎の見立ては間違いではなかった。アヴェルらの暗殺部隊のやろうとしていることは、文字通り“暗殺”なのである。フェイズウォーカー同士の戦いでもなければ、陰謀による政治的な処刑でもない。あくまで日の目を見ることのない暗殺なのである。



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