「どなたか、応答を」

「こちら、第十一隊所属、リツ二佐。応答願います」


 一人木立こだちを抜け、リツは通信機に話しかけた。電波が悪いのか、わざわざ感度のいいところを探さなければならないのがしゃくだ。

 それならそれではじめから感度のいい場所に居ればいいようなものだが、それもつまらない。


「どなたか、応答を。――なんだあ?」


 第十一隊のような例外はともかく、通信機には常に誰かがついているはずだ。しかも、つながっていることは繋がっているらしい。


「応答せよ、こちら――」

『…っ隊…か…』

「はい、こちら第十一隊所属リツ二佐。何かありましたか?」

『第八隊、スダ一佐だ』


 こたえる声は、リツほどではないにしても若い男のものだった。わずかにふるえ、強張こわばっている。

 リツよりも上の階級だが、確か副班長だったはずだ。思わず、眉間にしわがよる。


『――やられた。班長が戦線離脱――いや、言いつくろうのはよそう。どうにか戦力になりそうなのは、私と新人の二人くらいだ』


 リツは、言葉に詰まった。念のために出動はしたが、援助など必要のないような、そんな任務ではなかったのか。

 相手も、それを踏まえてだろう。苦々しげな声を押し出している。


『――至急、こちらに合流してくれ』

「了解。座標を教えてください」

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