第83話 さっさと別れるべきです!
「あら?そう言ってくれるとすごく嬉しいんだけど、拓真君も満更ではないみたいよ」
「拓真先輩、本当ですか?」
「あ、ああ。まあな」
「拓真先輩、どうしたんですか?元気ないですよー」
「拓真君は昨日、彼女と大喧嘩したのよねー」
「おい、藍!」
「拓真先輩、それって本当ですか?」
「本当よー。でも、舞さんにはそれが誰かは教えないけどね」
「まあ、わたしが詮索しても教えてくれないでしょうから誰が拓真先輩の彼女なのかは言わなくて構いませんよ。それにしても拓真先輩に彼女がいたっていうのが驚きですよ」
「私はね、もしこのまま別れてくれるなら私がそのまま拓真君の彼女に収まってもいいと本気で思ってるんだけど、拓真君がなかなか首を縦にふってくれないのよねー」
「うーん、ちょっと時間をくれないか?」
「じゃあ、今日のところは待ってあげるね。私の隣の席はいつでも空いてるわよ」
「拓真先輩、次の彼女は藍先輩にする気なんですか?」
「うーん・・・だからちょっと考えさせてくれ」
「拓真先輩!先輩と喧嘩するような彼女さんとはさっさと別れるべきです!次の彼女を藍先輩にするかどうかは別として、そんな女は先輩の彼女として相応しいとは思えません!」
「舞さんの言う通りよ。ただ、私と付き合うとなると同じクラスだからみんなの視線が気になるって言って躊躇しているみたいなんだけど・・・そういえばもうすぐ内山君たちが乗ってくるから、私も今日は誤解されたくないからその前に立つわよ。拓真君も誤解されたくないなら立ちなさい」
「はいはい。さすがに俺も藍にするって決めた訳じゃあないから、今日は立ちますよ」
俺は藍の話に合わせる形で立ち上がり、藍も立ち上がったのでここからは三人で立ち話の形になった。唯、ホントにスマン!もし全てが解決したら、パスタでもステーキでも何でも奢ってやるから今だけは悪者になってくれ!
そして内山たちが乗ってくる駅に着いてドアが開き、内山たち三人が乗り込んできたがやっぱり唯がいない事を不思議に思ったのか中村が俺に話しかけてきた。
「おーい、たくまー、今日は唯さんはどうしたんだ?それに、お前は今日は日直じゃあなかったのか?」
「日直なら唯に代わったぞ。初日に俺が日直だと実習生が気の毒だっていう理由で俺は月曜日になった」
「おっ、それが正解だと思うぞ。初日の日直が拓真だったらオレは1時間目の授業を始める前に帰るぞ」
「たしかにKYの拓真が初日の日直だったら、中村だけでなくオレが実習生でも嫌になりそうだからなあ」
「悪かったな!俺はどうせKYだよ!!」
「まあ、唯さんなら間違いないわね。兄貴には申し訳ないけど、ここは交代して正解だと思うわ」
「おー、堀江もそう思うかあ?」
「ええ、そうよ。私も内山君や中村君と同じ意見よ。兄貴が初日の日直だったら私は教師になるのを速攻諦めるわ」
おいおい、こいつら三人、こぞって俺を馬鹿にしているけど、俺は無理矢理話を合わせているにすぎないんだぞ。俺だってそこまでKYでないと思っているんだから、これを舞が信じたらどう責任を取ってくれるつもりだ!?
だが、そんな俺の心配を他所に藍を含めた四人は俺がトキコーに入学してから先日までの「佐藤拓真KY暴露大会」を始めるし、舞は舞で俺の中学の時のKYを暴露し始めるし、俺はまさに『穴があったら入りたい』気分だ。まあ、たしかにこいつらの言っている話は全部本当にあった事だから俺が反論できないのも事実だ。でも、俺ってそんなにKYだったのか?自分でも聞いてて情けなくなってきたぞ。
そのまま「佐藤拓真KY暴露大会」は俺たちが東西線を降りるまで続いた。さすがに南北線に乗り込んでからは普段通りの俺たちに戻ったけど、周囲にいたトキコーの連中は唯がいない事を不思議に思ったらしくて、あちこちでため息が漏れていたのは事実だ。それは南北線を下りて歩き出してからもそうだった。自転車を下りて押している奴ら、徒歩通学の奴らも唯がいない事に気付いてがっかりしたような顔を一斉にした。その中にいた2年A組の連中は俺と唯が日直を変わったという事に気付いたらしく「兄貴が普通に日直をやれよ」と文句を言っていたのがしっかりと俺の耳にも届いていたぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます