第53話 リアル脱出ゲーム⑧~白いタブレット
俺が受け取った白色の紙袋に入っていた物、それは枠が白色のタブレットだった。
「拓真、これが最終問題という訳だな」
「だろうな」
「でもさあ、まさか国語のテストをここでやるのかあ?!勘弁して欲しいぞ」
「小野君、グズグズ言ってないで、そのタブレットを早くテーブルの上に置いて問題文を私たちにも見せなさい!」
「うわっ!頼むからその目だけは勘弁してくれー」
泰介はそういうと、タブレットをテーブルの上に置いた。
タブレットの画面中央付近には、こう書かれてた。
『問題 些細な行動も、時間をかけて継続すると、やがて、思わぬ大きな結果につながるものであるというたとえ (ひらがなで入力せよ)』
「たっくん、これって『ことわざ』じゃあないのかなあ」
「俺もそう思うぞ。藍はどう思う?」
「私もそう思うわ。歩美さんは?」
「わたしも賛成。舞ちゃんは?」
「同感です」
「という事は・・・拓真、漢字数学王の出番だ!」
「俺は漢字は得意だが、ことわざはどっちかといえば苦手だぞ」
「拓真君!ホントにあなたっていう人は得意分野と不得意分野の差が激しすぎます!!この答えは『ちりもつもればやまとなる(塵も積もれば山となる)』に決まってるでしょ!」
「あー、唯もそう思いまーす、唯が書きますよー」
唯は答えを平仮名で入力し、右下にある『OK』の所をタッチした。
そうしたら『正解です』という表示が現れ、その枠は小さくなって左上に移動し、次の問題が現れた。
『問題 どんな人にも必ず相応しい伴侶が存在するというたとえ (ひらがなで入力せよ)』
「えー!また「ことわざ」の問題ですかあ!?唯はこの答えが分からないよ」
「唯さん、ボヤいている暇があったら早く答えを書いて下さい!この答えは『われなべにとじぶた(割れ鍋に綴じ蓋)』です!」
「わおー、さっすが女子ナンバー1の才女ね」
「あゆみー、お前、国語だけはいっつも平均以下だからなあ」
「そういう泰介だって、物理は平均以下でしょ!」
「二人共!唯さんの気が散るから静かにしなさい!!」
「「すみません・・・」」
唯は藍にせかされてタブレットに答えを書き込んだ。『正解です』という表示と共に少し枠が小さくなって右上に移動し、これで画面の上の4分の1程度が2つの枠で埋まり、さらに次の問題が現れた。
『問題 悪事や欠点などの一部を隠して、全部を隠したつもりでいることのたとえ ローマ字(ヘボン式)で入力せよ。大文字、小文字のどちらでも可』
七「ひふみちゃん、三河安城(愛知県)を通過したわよ。もう次は名古屋駅よ」
「あー、これは唯も即答よ。この答えをローマ字で書くのは結構面倒だけど答え自体は簡単。『頭隠して尻隠さず(atamakakushiteshirikakusazu)』よ」
唯は面倒だといいつつ、スラスラと答えを入力し、再び『OK』の所をタッチした。 そして再び『正解です』という表示が現れた。
だが、その次の瞬間、全員が息を呑んだ!画面の下の方に信じられない表示が出たのだ!
『さあ一二三君、 □号車□番□席に行くんだ!』 チャレンジ1回目
(答えを入力し、『OK』をタッチして『合格』の表示が出たらタブレットごとスタッフのテーブルに持って来て下さい。4回失敗するとその時点で終了です)
「おい拓真!まだ続きがあったのか?しかももう次は名古屋だぞ!」
「ああ、俺もノンビリ構え過ぎていた。結構ゆっくりやっていたツケが回ったぞ。どうする?」
「たっくーん、これだけで座席が分かるの?」
「落ち着きなさい唯さん、これは『いろはカルタ』よ」
「藍、カルタとはどういう意味だ?」
「江戸時代に作られた『いろはカルタ』は、いろは47音に合わせたことわざが使われているのよ。しかも『ち』の上方と京都は『地獄の沙汰も金次第』になっているから、これは江戸カルタだけど、いろは47音のうち、『ち』は8番目、『わ』は13番目、『あ』は36番目よ。だけど、36号車も36番席もないわ。でも、この場所だけ、わざとローマ字で書けと指定されているから、頭文字は『あ』ではなく『A』となるから、答えは8号車13番A席よ」
「唯、すぐに答えを入れるんだ!」
「分かったわ」
「さすが文芸部所属の藍ちゃんね。こういう所にも詳しいとは思わなかったわ」
唯が答えの数字とアルファベトを入力すると『合格』の表示がでた。
俺は唯からタブレットを受け取ると、大急ぎでスタッフのテーブルへ走った。そしてスタッフから薄い茶色の紙袋を受け取ると、また大急ぎで自分のテーブルに戻って行った。もう俺にも精神的余裕が殆どない状況だ。
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