伍滴:敎會 - Ecclesiastica -
――――――― 2 ―――――――
「
「
――馬鹿な事を。
敬称を重ねて呼ぶ
こんな
内務省
搜査
特異点爆発に因る異能や異形の実在は、六課と七課の存在を
『東京
共同搜査本部には、國際搜査課國際搜査情報センター國際
「で、
「神父は只今、
――そら、是だ。
是だから
時間に
明らかに俺を形式的な扱いとして据え置く腹。
こんな下らない捜査に俺を配属するとは、一体、“上”は何を考えているんだ。
「いらっしゃいました、
挾間田と呼ばれる男は、明らかに外人。
創氏改名適用外の
是は、
無論、蓼丸は
「ヤア、皆サン、
「…ハッ!恐縮であります」
西岡が敬礼をする。
続け
蓼丸と久我だけは会釈に留まる。
國際搜査情報センターの係長が此の
明らかに此の外人は、
195cmは在ろうかという身長に筋骨隆々、
身長差を考慮しても、此の男の下目遣いと
東洋人を
人種的差別
西岡も西岡だ。
同盟國とは
其れに比べると特高とは云え、久我だけは
西岡は経緯を説明している。
漂著物である
併し、問題はその内容物。
共同搜査本部設置前、
後日、
「――と云う訳でありまして、拾得物に
「日本語ハ
「…平たく申しますと
併し、内容物に就きまして些少でも伺っておきませんと搜査が進まず頓挫し、益々ご迷惑をお掛け致します故、何卒、開示可能な範囲でお話を、と」
「少女
――成る程。
俺が呼ばれたのはそう云う訳か。
だが、
敎會
特高の外事課も凡そ、其の為。
恐らくは、“上”も腹を立てているのだろう。
そんな処だろう。
まぁ、こんな事に巻き込まれて今
「
「――寫眞?
神父は愛想良く笑みを浮かべ
西岡も釣られて照れ隠しをするかの
――全く話にならん。
「
小官が責任を
蓼丸が答える。
神父は僅かに眉を
「Quod nomen tibi est?」
「Mihi nomen est Taketo Tademaru.
もし宜しかったら、
「ハッハッハッ、日本語デ問題アリマセーン。羅甸語ハ
ワタシモ早ク日本語ノ
此奴が保有している國際資格も厄介だ。
尤も、
此奴自身も
千葉市内に設置された監視カメラに残された
来週中にでも本廳に帰還だ、な。
――千葉中央警察署刑事課喫煙室
千葉
「永江さん、どう思いますか?」
カリンカリン、とシルバーが擦れ合う重い響きをリズミカルに繰り返す。
ジッポーの
考え事をしている時に出る、余り上品とは云えない
永江は其の
「鈴本、お前は賢いから何かと言葉を割愛しちまうが、俺には何の事を云ってるか、サッパリ分からん」
鈴本は永江より階級や役職は上だが後輩。
所謂、準キャリアとノンキャリア。
鈴本は永江を慕って刑事課への配属を願った。
永江も二人きりの時は敬称も役職も付けずに呼び捨て。
暗黙の了解。
永江は鈴本を信用しているし、鈴本は永江を信頼している。
「すみません。挾間田神父の事です。どうにも
ジッポーの
手持ち無沙汰と僅かの
知ってはいるが
「そりゃそうだろ。外國の、況して宗敎屋の言なんて何一つ信用ならん。大事な事なんぞ何一つ話ゃせんだろうし、恐らく、勝手しやがるだろうさ。
それより…気をつけなきゃならんのは、
「六課の管理官と特高の調査官ですか?確かに、多少常識に
永江はショートピースを吹かし、眉毛を
永江の癖。
「エリートのあんちゃんは
共同搜査だっちゅーのに、協力
「
「
忙しくなるぞ、と呟き喫煙室を一足先に出る永江の背を眺める鈴本。
――頼もしい先輩だ。
殆ど情報開示されない上、外國の宗敎絡みの面倒な
俺は俺で遣る
恐らく
点けたばかりの煙草を
――千葉縣警察部特別高等課
外事係調査官
凡そ、千葉縣警察部で自身のデスクをマルチディスプレイで囲んでいるのは、コンピュータ犯罪捜査官を除けば、久我くらいなものだろう。
キャリア組として
<
敎會マフィアと云うのは、飽く迄も俗称に過ぎない。
『
実の処、國内では加特力系敎會マフィアの影響力は微々たるもの。
國内には
毒をもって毒を制す、ではないが、闇社会は監視対象として行き届いた八九三の方が具合が良く、この非合法組織によって海外勢への牽制になっている。
併し、問題となっているのは朝鮮系敎會や新興宗敎に紐付いたマフィア。
國内で影響力の乏しい加特力系敎會マフィアを吊し上げるのは、
その為に、
予定外だったのは、
聞けば、帝大の先輩との事。
敎會マフィアの件は特高外事からの特命。
如何に本廳からの応援とは言え、そんな話を知る由もないだろう。
にも関わらず、本件の遺失物ではなく、
だが、そのお
蓼丸を追えばいいからだ。
既に仕込んだ盗聴器から
成る程、な――
神父と遺失物、双方共に追っている。
“出来る”男、だ。
「…近付くか」
ぼそり、と独り
いかん!
つい、考え
上手い
落ち着く為、
トローチを
幼少の折から雑念を払う為の久我にとっての必須アイテム。
是も何時もの事。
だが、落ち着いた。
よし、蓼丸に近付こう。
――
「是は是は、ピエトロ・ダキーラ神父。お待ち申し上げておりました」
千葉敎會の主任司祭、谷山神父は
望まれざる客。
谷山は
“
「
ニコニコと満面の笑みを浮かべる挾間田だが瞳に表情は無い。
谷山は直感する。
この男、
「
「…いえ、
「――
何と鋭い人物か。
俗世に想いを巡らせば、悟られてしまう。
「ドウシタノデスカ谷山神父ゥ。酷ク汗ヲ~、搔イテイル
見上げる程の大男、挾間田が急に顔を近付ける。
――ベロリッ!
ザラリとした感覚が額を這う。
「うッ、うわぁ~ッ!!な、何をっ!?」
「
頭皮、
突然、何を云っているんだ。
冷や汗、の事を云っていのか?
挾間田の瞳はチカチカと明滅するかの様。
「是ハァ~、
「えっ!?」
「嘘ッ!ウソッ!ゥゥウ~~~ソォヲツイテイルゥ、味ガスルゥーッ!!」
「ヒィッ!!?」
「ワタシニ、
ア~、ユゥ~、エェェ~ィメェン?」
笑顔、という表情を浮かべるものの、蔑む様な下目遣いには怒りの色しか見られない。
笑顔の仮面の下には、怖ろしい本性が
危ない。
この男、“
「
併シ、其レガ赦サレルノハ2度迄。主ハ寬容デスガワタシハ其処迄寬容デハ無イノデス!」
「す、すみませんでした…」
素直に
不用意な嘘や言い訳は返って疑われる。
併し、これで分かった。
敎會にとって
慎重に事を進めねば。
挾間田による評価は其の
神よ、
「
「え?長旅からの休養を取られてからの方が宜しいのでは…」
「イエイエ、是非トモ見テミタイノデスヨ」
「な、何をで御座居ますか?」
「異敎徒ノ豚共ノ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます