文学部情報知能学科

妙葩

心理学≠文系問題

「ここにはかつて仙台城の便所だったんだよ」

我が指導教官は言った。誇らしげに。

「あー道理で日当たりが悪いんですね」

「そうなんだよねえ,でも便所だったって聞くと許せちゃうよね」

教授はマイセンをくゆらせながら嬉しそうに続ける。

いやあ許せないでしょ――

などとは言えずに黙って愛想笑いした。


青葉通りがその名の通り青葉に溢れ,仙台が最も美しくなる5月中旬の火曜日の事だった。


弊研究室は文学部に属している。ゴリゴリの文系である。

と思って入学すると後悔する。かもしれない。

実際は研究室により大きく異なっており,英文学ならそれこそシェイクスピアとか話題のカズオイシグロとかハクスリーなどのド文系を学ぶことになる。

東洋文学や仏文独文でも同様である。

哲学に関しては罠があり,科学哲学なぞ選ぶものなら理学部も真っ青な数学物理学の知識を要求される。らしい。

そして我らが研究活動に励む,仙台城便所跡地に建設されたK棟には行動科学や心理学などが入居している。

心理学などと訊くと,男根ドスケベおじさん事ジークムント・フロイトやガスタフ・ユングや一世を風靡(?)したアドラーなどを連想される向きも多かろう。

現在では,心理学を学ぶ学生は「ぺろっ,これは男根のメタファー」なんてことはしていない。ほとんどはエクセルとSPSSと呼ばれるソフトを活用or依存or責苦している。中には白衣を着て唾液を分析しホルモンを計測したり,頭に電極を付け脳波を測ったりしている奴もいる。

確認するが,文学部である。文理の区別などクソの役にも立たない。

K棟に入居する学問領域は往々にしてこのような様相を呈しており,文学部情報知能学科と揶揄する人もいるらしい。知らんけど。




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