KUDARANAIKOTO

今日も人はくだらないことを繰り返す。グローブといういびつな形をしたものを手にはめ、金属を棒状に伸ばしたものを赤い刺繍の入った丸いものにあてようと努力する。そのために親にたくさんのお金を払わせて、「楽しかった」と言ってそれでおしまい。

こっちでは何やら重たそうなものを妙な姿勢で滑らせて氷に描かれた円の中で止まらせようと集中している。あのシューズも、あのジャージも、いくらかかったのだろう。

もったいないな。

アフリカの人たちが苦しんでいます。震災にあった人々はまだ充分な生活ができていません。だから、私たちはお金を寄付します。そんな私たち、偉いでしょ?

昔の人々が時間つぶしのために考えた遊びを、今になって必死に競技する。時間が過ぎる。練習もしないと。新しいシューズ、新しいグローブ、新しいバットに新しいジャージ。いっぱいお金をかけて自分の大好きなことをやって、それでいて貧乏な人間たちにお金を寄付する私たち。これ以上もないくらい、人がいい。

スポーツを見て人々は感動する。スポーツをして人々は一喜一憂する。スポーツで有名になった選手は自分の財産のほんの一部を誰かに寄付する。そして好感を得る。

君たちがスポーツを止めないからみんな苦しんでる。「みんな喜んでくれているから」なんて、どこを君たちは見ているんだろう。笑えてくる。

でも、そうして君たちを馬鹿にする僕も、結局誰かにお金を寄付する勇気はない。情けない。でもそれを深刻に考えることはこれからもずっとないだろう。

その程度だ。そんな僕たちはくだらない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る