第64話「二依子の家の朝の風景/みちよちゃんクライシスセカンドインパクト」
二依子は母のその言葉に驚きの表情を見せる。
「お母さん解るの?ユナちゃんが?」
「そうね、生き霊っぽい色してる位しか解らないけどね」
「!」
これにはユナも驚きを隠せない、フォッカー譲りの驚きのジェスチャーはツッコミキャラからの脱却を謀るきっかけになりうるか?。
「起きたのかい二依子」
「おはようお父さん、あれ?ザジ君?」
だが書斎から表れる雄一郎、つまり二依子の父親と、肩に乗って仲良くしているザジを見て、ユナの今謀ろうとしたツッコミヒロイン脱却路線がいともたやすく脱線する。
「 仲 良 し か !」
ツッコミの秘奥に達すると、有りとあらゆる局面でもその返しの語句が恐ろしく短く、時にクズの様な煽る発言でも平気にこなすと言う。
故に彼女がヒロインレースからコースに戻るには時間を用す。
いや戻れるのか?と言う事実には目を向けないで欲しい。
「お父さん、ザジ君と顔合わせてたの?」
「前の事件の時にね、彼とキャンパーの面々にはツテが有るんだ」
カンチョウが以前、亡霊以外のツテを語っていたのを覚えていたら幸いだ。
キャンパーの面々がこうして色んなツテを持っているのはネットの時代ならではと言えよう。
物資の調達の取り引き等も行われる事もある。
「僕はもう仕事に行くよ、またいつか部屋に遊びに来てくれ、ザジ君」
「うんおじさん、ありがとう」
ザジは二依子の元に駆け寄った、プラモデルの姿でフワリとテーブルに乗る。
ここで二依子の母親が笑みを浮かべて「さあご覧」と二依子に催促。
「ご飯食べて気合い入れなさい、今日バトルでしょ?」
「うん……今日は忙しいから、今食べとかないとバテそうだもん」
食卓で二依子と家族との微笑ましい会話が始める、今日のバトルについてのようだ。
「ポゼ部の相手が運営会社だって聞いてちょっと今日は豪勢にしてみたの!」
テーブルには、二依子の好みにあわせた手のかかる和食が並んでいた。
「うへへ、これは旨そうな鰤大根、私今日の試合、頑張って運営にいっぱい聞き出してやるんだから……」
二依子は目を輝かせ箸を取る。
「ふふ……」
二依子の母の微笑みが漏れる、彼女には引きこもりから脱却出来て、こうして食卓に並ぶ好物に喜ぶ娘の姿が楽しい様だ。
二依子は食べながら今日の相手の「運営チーム」の事を語り食卓を賑わせていた。
「……でね、なんとかザジ君に頑張って貰うの!」
「仕事しながら応援してるわよ!」
「うん……」
母親にエールを貰って照れ臭そうにご飯を口にかけ込む二依子が、ザジとユナに微笑ましく映る。
ユナもまた自分が少し前までこうしていたと言う事実が、再び札から解放されたいと言う気分を起こしていた。
……唐突にユナはザジに問う。
「私がこの姿になってどれくらい経った?」
「ええと……」
ザジがふと日数分を数えだす。
「ユナが来てすぐに訓練して、次の日の夜にはあの戦いだったもんな……俺達は寝ない分、日数を忘れがちだけど」
「一週間位経った?」
「俺達がここに来て五日が経ってるからそれ以上だ、八日か?」
「!」
その日数にユナは驚愕、気が付いた事実を言葉にする。
「あれ?これじゃあキャンパーに居た時間より長いじゃない!」
「本当だ!、でも何時までも寝っぱなしの本体の事を考えれば長居は出来ないだろ?」
「そうだけど……うん!私も起きたら絶対憑依アプリ使う!、それでみんなに会いに行くんだ!二依子さんにも!」
自身の本体と今の時間、板挟みの世界にジレンマを感じるユナだった。
「ご馳走さま、最高だったよ!お母さん」
二依子は箸を置いて食器を片付けると、登校の準備を始めた。
「どういたしまして……また学校に行くの休みなのに?」
「部員に集合かけてるの、その前に調べモノ」
「そう……」
二依子の母親は何か知った面持ちをしていた。
******
二依子の学校の前に不審な黒いワゴン車が止まっている。
(……)
(……ザーッ)
「頭目様、聞こえます?」
イヤホンマイクの音声が、校舎を歩く女性の耳に聞こえる。
「聞こえておる、あまり応答は出来んぞ、休日であっても部活動やらで学生が居るのでな」
返答の主、それは二依子と同じ学校の制服で身を包み、潜伏する陰陽師の頭目の姿だった。
「卒業生の妹に、虫を見るような目で見られながらも、借り出してきた甲斐が有りました」
黒服の一人が家族の方から借り出してきた制服、何故か成人の頭目にすっぽりとサイズが合う模様。
「悔しいのじゃ!腰回りがキツく、スカートも短めで恥辱の極みなのじゃ!」
「はい……(頭目様最高です)私の妹も最終的に頭目様が着こなすと伝えた所、態度が変わって喜んで差し出しました!」
「お、お主の妹はワシを着せ替え人形とでも思うとるんじゃなかろうな……」
そうこうしながら頭目は学校の過去の記録がある場所、図書室を捜索。
人に聞くのが最短だが、聞くと潜入がバレるので、キョロキョロとあちらこちら見回りながら不審者をエンジョイしていた。
「うむむ、困ったのう……」
「図書室見つかりましたか?」
頭目は何やら困った様子、周囲の生徒の目が気になる様だ。
「バレる事は無いと思います、頭目様は年齢の割に、か細いお姿で有りますから女子高生に扮しても気付かれ無いかと……」
「いや、そうではない、妙に生徒の視線が気になるんじゃが」
「!」
ここでふと気が付いた黒服達が、マイクの集音を上げる。
暫くして、男子生徒のヒソヒソとした声が聞こえてきた。
「おい……なんだあの娘、あんな可愛い美人、ウチの学校に居たか!」
「本当だ!転校生か?何処の異世界から来たんだ!あれほどの良い顔立ちは中々居ないぞ!」
この男子生徒の言葉に対し、黒服達に電流走る!
(不味い!悪い意味で目立ち過ぎる)
「頭目様!その場から離れましょう!男子生徒はきっとケダモノです!危険です!」
「ななな何じゃと!ひえええっ!?」
「……どうしました頭目様?」
どうやら頭目は腰が引けている様子、そのまま慌てて人の居ない階段の方に逃げ込んだ。
「男子生徒の視線がやたら刺さるのじゃ、よく考えたら……ワシ女子高育ちじゃった!共学とか異世界なのじゃ!」
(黒服達無言のガッツポーズ!)
「何じゃ?先程からお主ら何か変じゃぞ?!」
「いえそんな事は有りませんとも、有りませんとも?」
黒服達はニヤニヤしながら何故か二度言った。
「スカートが気になるんじゃ、視線が刺さるんじゃあ、図書室は何処なのじゃああ!?」
頭目はひいひい言いながら、上階へと階段を上っていった。
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