第56話「定時連絡②」


 頭目がワナワナと震える、そして手を振り上げて黒服達に指示を出した。

 

 「調べあげるんじゃ!コイツらどんな奴等か!ワシの全裸市中引き回しが懸かっとる」

 

 「行け!お前達!任せたのじゃ!」

 

 「はい!……」

 

 黒服達はちょっと残念そうに、返事をして部屋を後にしていった。

 

 残された部屋で頭目は矢文を引き抜いて、砕けた窓ガラスを片付け始める。

 

 (ホテルの弁償代、姉上名義で出してもいいんじゃろうか……)

 

 御家の一大事に等しいこの″地霊″の案件、手懸かりひとつあれば……


 数々の自信の起こした暴挙も、何とか帳消しに成るかもしれない。

 

 

 「悪霊一匹二匹払った程度では姉上の顔色は変わらん……だがここで蔵の持ち出し品の正当な言い訳が完成すれば!」

 

 「″全裸市中引き回し″は無くなり、″尻叩き百回″位にまでは許してもらえる!」

 

 グッと拳を握って構える頭目!

 

 (……)

 

 

 ここで……

 

 矢文にかかっていた血文字の呪詛が神々しく輝きを放ち!


 「ぬぅ?!」

 

 

 

 ……その怨差は烈火を放ち、激しく爆発した!


 「ひぎゃあ!!爆発オチとか最悪なのじゃああぁぁ!」

 

 片付けた部屋は再びメチャクチャになってしまう。 

 

 「下に恐ろしき姉上の呪力、世知辛い……のう」

 

 プラモデルの箱を抱えて、ボロボロになった涙目の頭目……

 

 彼女の明日はどっちだ!。

 

 

 

 **********

 

 

 

 場面は更に変わり、とある森の中。

 

 

 亡霊の方舟である大型車両″キャンパー″が道なき道を進んでいた。

 

 キャンパーは先の立ち入り禁止の看板を抜けて、舗装もされてない落ち葉だらけ畦道を走る。

 

 そこには朽ちたトンネルが……

 

 所謂心霊スポットのガチで行くとヤバそうな、消えた村とか呪いの村みたいな場所に着くと……

 

 トンネルの中に隠された通り道が出てきて、キャンパーサイズの大型車でもギリギリ通れる様な通路が出てくる。

 

 「メンバーに通達、キャンパーはこれより地下帝国の門をくぐる」

 

 カンチョウのアナウンスがキャンパー内部に木霊する。

 

 かなり大きな通路が出てくる様見えてくる、幻術のような擬装が成されおり……ソレが消えると工事現場の様な通路が現れる。

 

 現れた下り坂の通路をキャンパーが降りると只っ広い空間が姿を表す。

 

 「ホンマ人里離れた山の地下に、こないな空間有るとかビックリやで!ユナちゃんに見せたいわー」

 

 ねぱたの言葉通り、巨大な貯水施設がそのまま放棄された様な場所で。

 

 ドーム球場クラスの地下空間が、そのままボディの小さな亡霊達のミニチュアタウンに改造された場所になっていた。

 

 車両停泊場所にキャンパーが止まる。

 

 直ぐにタイヤをロックされると、荷物の検査の為に亡霊達が集まった。

 

 亡霊の警備員らしき集団が、プラモデルやフィギアのボディで集まり、入国手続きが始まる。

 

 トイボディに入ったカンチョウとラマーが携帯端末を背負い、滞在の許可を申請し始めた。

 

 「なんで入るのに申請が要るん?妙に騒いでない?」

 

 カンチョウがねぱたの問いに答える。

 

 「本来はここまで厳重な審査は無いが、我々が巨大霊体と戦った事に何やら関係が有るらしい」

 

 事前に入国の申請をネットを通じて行ったが、到着後に審査と言う結果になったのだ。

 

 

 「結局滞在の許可出なかったら、このまま立ち往生なん?」

 

 ねぱたがちょっと心配している。

 

 「待つしか無いようだ、幸い電波は届くからパルドの定時連絡でも待とうじゃ無いか」

 

 カンチョウは憑依している小さなブロックトイで、御手上げのポーズをしている。

 

 「もどかしいわー、ウチが亡霊やなかったら待ってられんやろうな」

 

 結局、滞在許可はこの後三日以上かかる事になる。

 

 「ウチもザジに着いていきたかったなあ……」

 

 ねぱたは残念そうだ。

 

 

 

 「!」

 

 暇をもて余すカンチョウ達に、朗報の如くザジ達の定時連絡が来る。

 

 「おお、来たかね!ラマー、読み上げてくれ!」

 

 ここで読み上げてくれるはずのラマーが、何故か固まっている。

 

 「ええっと……!うん?」

 

 眉間にシワを寄せラマーは困惑。

 

 

 「何かね?また暗号の解読の如く、読み取るのにツッコミの準備が必要かね?!」

 

 カンチョウはツッコミの準備をしている様なので、ラマーはボサボサの頭を掻いて仕方なく読み上げた。

 

 

 

 

 「ガッキィィィン!(パンジャン合体音)ギャルル!……ゴゥン!!(ザジの盾スキル音)」

 

 「ボボォォン(パンジャン自爆音)」

 

 演技力の乗ったラマーの読み上げに、カンチョウは目を丸くして困惑。

 

 「バシュゥゥ!(カタパルトからヴァリアント・ドーマン発進)……ギュィィィン!ブッピガァァァン!(式神ストライカーパック合体音)」

 

 「ギュララララ!(戦車のキャタピラ音)ガシィィィン!(パースの効いた構えで剣を構える音)」

 

 「キュァァァグィィィィン!(剣からほとぼしる霊力音)ギャキィィィン!(一刀両断音)ブジジッブジジジジ!(斬られた戦車から電光が)」

 

 「キュドォォォォォオオン(ス○ロボ風爆発)……徐霊完了じゃ!(頭目の声真似)」

 

 

 暫しの静寂の中ラマーが言う。

 

 「……以上です」

 

 「「まるで意味がわからんぞ!!」」

 

 今日もカンチョウのツッコミが冴え渡る。

 

 「まあ……ウチらザジが送ってきたURLで中継見てたんやけどね」

 

 ねぱたは心配になって、皆中継にかじりついてた事実を口に出した。

 

 

 

 

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