第54話「化身(オリジナルボディ)」


 「これは……」

 

 黒っぽい青メタリック色の装甲と、赤いフレームが目立つ騎士を思わせるロボットのプラモデル。

 

 ユナはその様子を見て思う。

 

 「!?」

 

 (ザジ君がいつも戦闘で使ってるプラモデルにそっくり!)

 

 ザジが普段使っている騎士ロボのプラモデルに似ており、ややこちらの方が大きいサイズ(1/100)であり……

 

 細見な上にディティールが凝っていて大きさのせいか、どっしりしている様に見える。

 

 「似ているだろ?いつもの騎士ロボのボディはドクが似せて作った小型のダミーみたいなもんだ。」

 

 普段使っている騎士ロボットは、ドクによって造られたリスペクトプラモデルらしい。

 

 

 (……)

 

 二依子がそのザジのオリジナルボディをマジマジと見ている。

 

 そして何の躊躇もなく手にとって、色んな角度で表面のキズ等を確認し始める。

 

 「このボディ……!私がザジ君と初めて会ったときのボディだ!」

 

 「ああ、懐かしい!」

 

 なんと以外にも、二依子には馴染みのシロモノらしい。

 

 (と言うことは二依子さんはキャンパーの中にオリジナルボディを入れる前のザジ君に合ってたのか……)

 

 会話からユナは二人の出会いの時期を考察していた。

 

 

 ザジが改めて二依子に頼む。

 

 「キャンパーでドクに改装して貰おうにも、俺の霊力に当てられて手が進まないらしいんだ」

 

 「メンテナンスや補習をしてたのは過去にコンビを組んでいた二依子だけなんで、今回もやってくれないだろうか……」

 

 ザジが平伏してまで頼み込む。

 

 「改まってどうしたの?ザジ君らしくない」

 

 二依子が困った顔を見せた、ザジらしからぬ行動が返って不安な感覚を煽る。

 

 ザジが平伏するまでの理由を述べる。

 

 「これから有りうる可能性からして、キャンパーから降りてオリジナルボディで戦う必要が有るかも……」

 

 「大体のキャンパーメンバーのオリジナルボディはそのまま使えるけど、それじゃ駄目なんだ……」

 

 ザジの言う「駄目」と言うのが気になって、二依子だけでなく飛行船ドローンから霊体を乗り出したパルドが問う。

 

 「つまりアレか、ちょっと霊力が落ちても良いから″もっと″動ける様に改修してほしいってことか」

 

 「うん、俺だけ先走ってる様で済まない」

 

 ザジの返事で二依子が返事を返した。

 

 「わかった!ザジのオリジナルは私が改修する!」

 

 

 「!」

 

 二依子が提案に乗ってくれる様だ。

 

 「すまない俺は何もお礼を返せないんだが、二依子はそれで良いのか?」

 

 ザジも流石にタダでやらせるのは忍びない様だ。

 

 二依子が少し考えて言葉を返した。

 

 「いつか……私の霊体が回復して、ちゃんとアプリで離脱出来るようになったら……」

 

 

 

 「ザジ君と憑依状態で″デート″したいな……」

 

 

 「!」

 

 突然のヒロインらしい意見に、ユナは二依子が眩しすぎて直視出来ない!

 

 「何の光ィィ!?……」

 

 小手先のツッコミヒロインでは、圧倒的ヒロインパワーには敵わないのだ!。

 

 「偉いこっちゃ……これは戦争やでえ」

 

 ヒロインレースを音速で逆送していそうなユナが、クマのヌイグルミボディから転げ落ちる様な仕草で語る。

 

 ただ、何がどう戦争なのか……。

 

 

 

 ……こうして二依子の″ザジオリジナルボディ″の改修が始まった、手慣れた手付きでキズや関節の磨耗をチェックする。

 

 作業に見とれるユナ、何か違和感を覚える。

 

 「分解して……いいのザジ君?」

 

 ユナは二依子が、さらっとオリジナルボディの腕や足を外している様子に恐怖を覚える。

 

 「よく見てみな……パーツ一つ一つに霊糸が繋がってるだろ?」

 

 目を凝らして見ると手足に繋がりを感じるモノが見えた。

 

 「オリジナルボディは″核″みたいなのが中央部分にあって、手足も霊糸で頑丈に形成されているんだ」

 

 「外しても大丈夫だ、本来プラモデルボディ自体を加工したりしたら霊力が散ったりするけど……」

 

 「オリジナルボディはぶっちゃけそれが誤差レベルでしかない……」

 

 「しかもその内追加された加工パーツが、馴染んで″一部として取り込んで″霊力が回復する」

 

 ユナが驚愕する。

 

 「馴染む?!馴染むのぉぉぉ!!?」

 

 作業を見たパルドが、ひょっこり顔を出すとヘコヘコした手付きで尋ねる。

 

 「誰か機械系に強いご婦人のお知り合いは居ませんかねえ、へへっ」

 

 「何せあっしのオリジナルボディは専門の機械系でして……」

 

 二依子がパルドの様子を見て考え、答える。

 

 「愛華と菊名にそう言う知り合い居るか聞いとくよ、期待はしないでね」

 

 「へへっ、よろしくお願いしぃゃす」

 

 何故か悪代官の越後屋みたいなパルドが平伏していた。

 

 

 

 「ねえ……」

 

 二依子の作業が進む中、ユナはオリジナルボディをジーっと見て言う……

 

 「このオリジナルボディって強いの?」

 

 ここでユナが唐突にオリジナルボディについてザジに訪ねる。

 

 「……」

 

 少し沈黙してから、ザジが首を横に振って答えた。

 

 「実は普通のボディと変わらない、強いて言えば霊力の回復がちょっと早い位で、二依子の作ったボディとそう変わらない」

 

 ユナはやんわりツッコミを入れた。

 

 「そうなんだ……ってその″ちょっと回復早い″ってのは結構凄いんだけど、どうなの?」

 

 ザジは困った顔で答える。

 

 「いやいや……″姿が変わってパワーアップ″なんて、俺達には無いのさ(しみじみ)」

 

 このザジの言葉には、妙に説得力があった。

 

 

 「ふう……」

 

 作業中の二依子が、細かいパーツの調整で集中する。

 

 「関節の保持力は完全に無くすよ?ボールジョイントは軸ジョイントに交換するから真鍮入れたりしても良いんだよね?」

 

 細かいドリルで穴を開けて、軸ジョイントに真鍮線が差し込まれた。

 

 (徹底的に軽いまま強度を上げて、動きやすく……)

 

 そのボディには二依子の培ってきた技術が詰め込まれていった……。

 

 

 

 (……)

 

 

 だが夜の一時になろうとしていると、二依子が作業を中段した。

 

 「つい没頭し過ぎちゃった……もう寝ないと……」

 

 流石に好奇心も、睡魔には勝てない様だ。

 

 そそくさとシャワーを浴び、寝間着に着替え、寝る支度を済ませてベッドに入る。

 

 「ザジ君、みんな、おやすみなさ……い」

 

 再び静かな夜の到来である。

 

 「レストルームの霊力はまだ残っているな、俺達も休もう」

 

 ザジとユナは飛行船ドローンの下部のレストルームに入って行った。

 

 「カンチョウに定期連絡だな、色々有りすぎてどう書こう……」

 

 その中では、パルドが連絡文の作成に頭を抱えていた……。

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る