第44話「定時連絡①」


 場面は代わってここは人気のない道路。

 

 人里を避ける様に移動するキャンパーの姿があった。

 

 

 「地下帝国にはもうすぐ着く、だが一旦停車して定期連絡を受けよう」

 

 カンチョウが更に人気のない脇道に入ると定期連絡を待つ。

 

 

 「来た、フォッカーからだ!」

 

 「読みたまえ……」

 

 ラマーがここでフォッカーの定期連絡を受けて報告する。

 

 「フォッカーよりメールで入電、巨大犬霊を確認!被害にあった人間を乗せた車両を操作!」

 

 「何だって?!!」


 その内容にカンチョウが焦る。


  

 「SOSメールの送信者らしき集団に遭遇、被害者の収容施設へ運搬を済ませ……」

 

 「済ませ……?」

 

 全員が息を飲んだ。

 

 

 

 

 「現在歓迎熱烈なキスを受けて只今!」

 

 「「俺は有頂天!」」

 

 「ラマー君!メールを破棄していいぞ!」

 

 ねぱたがゲラゲラ笑いながら言う。

 

 「ちょっと心配させといて、やっぱりいつものフォッカーやないの!」

 

 どうやらフォッカーはあの後で人命救助に成功したようだ。

 

 「しかし恐ろしい話を降ってきたな、やはり巨大霊体は他にも存在したのか……」

 

 ねぱたはその話に意見を述べる。

 

 「ウチが亡霊になって、あんなデカイのがいること事態に驚いてるわ」

 

 カンチョウはその話に返答する。

 

 「このキャンパーの先代のカンチョウからもそんな話は聞いた事がない、最近の亡霊の増加傾向と何か繋がりがあるかもしれんが……」

 

 そう、カンチョウの言う増加傾向というのが近年になって判明した事。

 

 その結果、色んな亡霊がSNSでやりとりしたり、生前の知識を生かして活動を行ったり。

 

 世を忍ぶ亡霊がまるで生きているかのように、第二の人生得るというこの情況は正に軽くささやかな楽園と言っていい。

 

 

 だがそれは許される事なのかどうなのか、カンチョウもキャンパーの誰も知らずに居た。

 

 「パルドから入電、ザジ達の定時報告が来ました。」

 

 「読みたまえ!」

 

 ラマーがパルドの報告を読み上げた。

 

 「現在目的地のレディ、二依子の家に厄介になっている」

 

 「ここの街で密かにエキサイトしているエンターテイメント……」

 

 「生き霊がバトルする新世代アストラルスポーツ、ポゼッションバトルのランカー報酬に……」

 

 「ユナちゃんの体の紙札と同様のモノを発見した(!)、新しい手掛かりに躍起になる俺達は。」

 

 「明日からポゼ部の部員と、ゆるーくバトルの方針を模作するために……」

 

 

 「みんなで学校に行く!」

 

 

 ラマーが目を丸くして読み上げ終えた。

 

 

 「?」

 

 「?!?」

 

 カンチョウがその報告で固まっている。

 

「「暗号かね!?まるで意味がわからんぞ!!」」

 

 「エキサイティングでアストラルでスポーツでポゼッションとか、ランカー報酬とまで……」

 

 「何とかのルシがコクーンでパージみたいなのだが……(錯乱)」

 

 カンチョウが困惑した。

 

 「サイトのアドレスを貼付されてるようですよカンチョウ……」

 

 ラマーとカンチョウがアドレスに誘導されたサイトを閲覧。

 

 そこに貼られた画像にはハッキリと札の画像が見られる。

 

 「ホンマや!ユナちゃんの札の紋様あるわ!」

 

 「しかし名前が彦名札とは……」

 

 カンチョウはブロックトイのボディを座らせて考え、考察する。

 

 「彦名というキーワードで思い付くのはスクナヒコナ神か……」

 

 ラマーが聞き答える。

 

 「一寸法師のモデルであり神話の小さき神様ですね、我々にとっては御先祖かもしれません」

 

 「だがこれは複数存在する札の一つであると……」

 

 二人が延々と考察するが一向に進展しそうにない。

 

 「考えても仕方ない、もう我々も地下帝国の方に移動しよう……ってねぱた君は何処に行ったのかね」

 

 「いつのまにか居ないんだが……」

 

 二人がその場で探したらねぱたの姿はドクの所に居た。

 

 「今すぐに飛ばせるロケットとかない?!ランカー報酬とか燃えるんやけど!」

 

 工作室でドクに詰め寄るねぱたの姿があった。

 

 「行きたそうなのは山々だが、仕方ない我慢したまえ……」

 

 「追いて行けばよかったー!」

 

 ねぱたの嘆きが木霊する。

 

 

 

 

 

 場面は代わり、二依子の家。

 

 先程の定期報告がパルドから送られた後、ザジ達はバトルの経緯について語られた。

 

 

 「そもそもこんなルールのついたバトルゲームになってるとか、どういうことだよ……」

 

 ザジが二依子に聞きたいことはまずここだ。

 

 「まず憑依事件は、ほんの一握りの人間が始めた探検ごっこみたいなモノだけど」

 

 「中毒性が確認されて、ザジ君が使用中止を促して私達も使わなくなって」

 

 「憑依中毒事件と呼ばれてアプリ自体は削除された訳なんだけどね」

 

 二依子の説明に全員は耳を傾ける。

 

 「何故か復活して新たな仕様で帰ってきたの、それが……」

 

 「霊力相互管理による新ルールね」

 

 ザジがその言葉に答える。

 

 「片方にバイタルを管理させる事により中毒症状を回避するってことか……」

 

 ユナがふと疑問に思った事を口にする。

 

 「私生き霊だけど、スキル使えてるよ?」

 

 ザジがそれに答える。

 

 「その紙札の影響だろうな……」

 

 「ユナの場合はほとんど亡霊と代わらないくらいのしっかりとした霊体だから、ねぱた姉さんに言われるまで気がつかなかった……」

 

 しかしザジはユナの状態も気になる。

 

 「例の隔離施設にいる可能性が高いユナの本体も無事かどうかわからない、札の解析のためにランカー報酬の札は回収したいな」

 

 「隔離施設?」

 

 二依子がザジの話に反応する。

 

 「少し前に山間で発生したガス事件、その時に意識不明になった被害者を収容してるって言う病院施設だ」

 

 ザジの返答に二依子が曇った顔をする。

 

 「そんな準備のいい施設があったら、憑依中毒事件も″帰還者″がたくさん出たのに……」

 

 ユナはその様子を見て二依子の手に触れる。

 

 「私は帰還してちゃんと二依子さんに会いたいです!きっといい友達になれると思います!」

 

 ユナの言葉に二依子が目を丸くしたが、ニコリ笑って返してくれた。

 

 「フフ、どうでもいいけど貴女まだ中学校位じゃない?私大先輩よ?」

 

 ユナは真っ直ぐな目で答える。

 

 「年の差なんてノーセンキュー!絶対会いますからね、約束ですよ!」

 

 「ハイハイ……」

 

 二依子の顔が解れるのを見るとザジがユナの凄さを感じ取る。

 

 (連れてきて正解だったな、スゲエなコイツ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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