第20話「わたーしーにかーえーりな......(BGM)」

 きっとモニターしているならこう映っているだろう。

 

 薄暗い廃墟のベランダで顔が半分吹き飛んだ熊のヌイグルミが、ユラリユラリとにじり寄って。

 

 月の明かりで目を光らせてカメラに飛びかかる様が!。

 

 ちょっとしたホラー映画のワンシーンのようで、怒り狂ったユナの霊がうっすらカメラに心霊映像の如くフレームインしていれば。

 

 今や見なくなった、心霊映像特集がお茶の間を恐怖のどん底に叩き落とすかの様に、モニターしている相手を震え上がらせるだろう。

 

 そして、お分かりいただけただろうか…とナレーションがオチを持っていくのだ。

 

 

 

 「ウオオオオオオ!」

 

 乙女を失ったユナが野獣の如く吠える。

 

 「ウオオオオオオ!」

 

 G絶対殺すウーマンと化したねぱたも吠える、ってかお前らいい加減にしろよ。

 

 「どうすんだコレ…」

 

 呆れ返るザジとカンチョウ、だがまだそのネタは終わっていなかった!

 

 「…っは!まさか!あれは!」

 

 ザジの目に写る、上空を環のようになって回転しながら編隊飛行する物体!

 

 月をバックにゆっくり降りるその姿。

 

 

 「まさか…!そんな!」

 

 「量産型G!」

 

 「「培養していたの!?」」

 

 明らかに女二人を煽ってるような演出で、量産型ドローンGがついに全貌を見せる! 

 (とはいっても結局はカメラが付いたGなんだけどね)

 

 

 「操作してる奴は絶対狙ってやってるだろ!」

 

 もはやツッコミ切れないザジ。

 

 「パルド君、キャンパーから殺虫剤持ってきて」

 

 カンチョウも冷静に対応しようとしていた。

 

 

 …そして解き放たれる合体奥義!

 

 

 「「ハイ・ファントム!殺すG・サイクロン!」」

 

 もはや意味不明過ぎて訳が解らない技名を叫び、ねぱたが技を繰り出した。

 

 ねぱたの特撮フィギア附属の合体剣パーツから霊力が形成する竜巻が放たれると。

 

 同時に噴射したゴッキージェットプロの無香料フェイタルKO!の霧が合わさり、最強に見える。

 

 「せめて苦しまずに逝くがよい」

 

 ねぱたが悟りを開いた様な慈悲深き表情を見せていたが…

 

 「と思ったけど、てめーになんか慈悲なんてやんねー!くそしてねろ!!」

 

 

 急に凄い画太郎表情に変わり暴言を吐くと、霊力の電撃でゴッキージェットプロの噴射しているガスに引火させて、出来上がった炎の竜巻がGを丸焼けにする!

 

 Gが次々と頭から墜落していく様にユナの疑問が噴出した。

 

 「ザジ君、ねぱたさんちょっとG殺す事に特化し過ぎてませんか?(訴え)」

 

 ユナが気付いてしまった事に後悔する言葉を口にすると、前にいるザジは哀れみの目を向けていた。

 

 「解っていると思うけど、姉さんは実は俺よりも遥かに…その…脳筋なんだ」

 

 ザジが毎度の如く注釈を入れてくれる、姿がガールプラモデルだけに便利な解説ヒロインみたいになっていた。

 

 「過去にGが原因で何度もボディを壊す不幸(自爆)に見舞われてしまった姉さん、三度のリスポンを経て遂には…」

 

 (ゴクリ…(ユナが息を飲む音))

 

 「「アホになってしまったんだよ!」」

 

 「なんだってー!(ガビーン!)それは本当かい!」

 

 ザジの悲しむ演技からユナとの唐突な新喜劇コントが始まっていた。

 

 「あの知将と唄われたねぱた姉さんはもう何処にも居ない!(迫真)…ここにいるのは知性を失った哀れな野獣(ケダモノ)!」

 

 演技派女優(外見のみ)と化したザジのしばしのお涙頂戴が始まると、そこにねぱたが繰り出す新喜劇の様な知ってたオチがリキャストタイムを得て襲いかかる。

 

 「誰がケダモノじゃあああ!」

 

 ねぱたの鋭いツッコミが到来、キリモミからのピカピカ光るパンチがくり出される!

 

 ザジの霊体に直接クリーンヒットするが、そのままねぱたのボディがパッタリ動かなくなった。

 

 

 「もうダメ…動けない」

 

 ねぱたの霊力切れである。

 

 「ユナちゃん、私に構わず先に行って…後から追い付くわ(ガクー)」

 

 「いや待って下さい!その先は今ないじゃないですかー!」

 

 ユナのツッコミも冴え渡る!飛び交うボケの嵐の中で、心の目でボケのコア(核)を見つけて空裂斬的にツッコミが決まる。

 

 「ああ…カンチョウ、またねぱた姉さんがさんざボケ倒しの大暴れで霊力切れ起こしたよ」

 

 「ザジ君、もはや我々の救いはユナ君の切れのあるツッコミしかないようだ」

 

 カンチョウは手遅れの患者を診る医者のジェスチャーをする。

 

 「誰がボケ倒しやねんー」

 

 ねぱたは霊体のままザジの霊体に絡み付く。

 

 「ちょっと…姉さん!霊体に直接触れるのはマナー違反だよ!」

 

 「何言うてるん、ウチのナイスバディ堪能するんは今の内やで!おりゃああ!」

 

 チョークスリーパーで絡み付くねぱた、ユナは目を覆い隠して真っ赤になりながら困っている。

 

 「ねぱたさん…そんな!何て事を!ああ!手がそんな所に!」

 

 「何か凄く楽しいことされてるんだろうけど、霊体だからわからなーい!」

 

 じゃれあいながらのザジの叫びは霊声として木霊する。

 

 

 そしてこの会話を聞いているフォッカーはロボットの上でハチ公の如く鎮座して聴いていた。

 

 「今日は月が綺麗だなあ…みんなまだ助けに来ないな(遠い目)」

 

 

 そしてしばらくの時間が過ぎる。

 

 夜も更け、今だ状況が変わらない事で再び作戦会議が始まる。

 

 

 

 

 「なあやっぱりさ、俺達の排除を目的としてない気がするんだが、どうなのさ?」

 

 こう話を切り出したのはザジだ、今回の相手を見て不審に思ったらしい。

 

 カンチョウも賛同する。

 

 「排除と言うより火の粉を払う様な…邪魔だから追い払ってる様なそんな気がするね」

 

 そもそも攻撃を受けたユナのフルアーマー熊子の損傷も顔半分だが、修繕可能であり霊体の入った札にも被害はない。

 

 つまりボディを完全に破壊する攻撃を受けていないのだ。

 

 「ここでフォッカーがあの重火器のロケットランチャーを霊力で起爆して、自爆させるとかしたらイチコロやけどな」

 

 

 ねぱたのオープン霊声が聴こえたのかフォッカーが霊声を大きくして何か伝えている。

 

 「俺ごと吹き飛ぶ様な危ない事をさせる気か?とにかく陽動してくれないと逃げられないんだぞ」 

 

 フォッカーの様子をエアガンとは別のカメラが、チュインチュインとフォーカスし監視している。

 

 「フォッカー、そのまま両手を上げて二足で降伏ポーズして見て?」

 

 「うっ…マジか、コレで相手が完全に敵対存在だったら挑発してるだけだぞ」

 

 ねぱたの意見の通りにフォッカーが降参のポーズをすると以外な事が起こった。

 

 「?」

 

 そうエアガンの付いた暗視カメラのパーツがフォッカーの降参を見て、vクルクルと回ってジェスチャーし始めたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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