成仏

「お皿が…… 一つ……」


 茂作の目の前には井戸。

 その井戸から声が聞こえる。


「二つ…… 三つ…」


 茂作がキョロキョロしていると、

 井戸から幽霊が現れた。


「四つ…… 五つ……」


 あわあわと茂作は幽霊を指差し、腰を抜かしている。


「六つ…… 七つ……」


 混乱した中で茂作は、たった一言だけ絞り出した。


「い、今……、 な、なな、なんどきだいっ」


 よりによって出た言葉、

それは時刻を質問する言葉だった。


「八つでございます……

 九つ…… 十……

 …………

 あれ…… 足りてる……」


そういって幽霊は成仏した。


 




 


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