chapter01 「工業簿記」って何!?
「せ~んぱ~い!!」
私は
「美琴!ホームルーム終わったのか!?」
この人は、
「美琴!ずいぶん早かったのね!」
でこの人は
「はぁ はぁ…美琴ちゃん…煉先輩来てると、部活に来るの早いよね…」
この子は
「紗代、ごめんね…先輩が部活に来る日だって分かってたから、去年みたくまた簿記教えてもらおう!と思ったから…」
「美琴、あなた、先輩とデートしている時に教えてもらえばいいじゃない!」
「デートはデート、勉強は勉強、なの!!」
「…まぁ、それはいいとして。で、美琴。どうしたんだ!?」
「今年、選択授業で「日商簿記」ってのを選択したんだけど、私が日商3級を持っているものだから、早速2級の商業簿記と工業簿記を並行してやることになって…」
「で、商業簿記は何とかついて行けてるんだけど、工業簿記が何だか訳分からなくて…」
「なるほど…」
「美琴が去年やっていた「日商簿記検定3級」は、商品を外部から仕入れて、その商品を外部に販売する「商品売買業」を営む企業が採用する簿記の内容だったんだよ」
「一方、これから美琴が勉強しようとしている「工業簿記」は、自ら製品を作り、それを外部に販売する「製造業」を営む企業が採用する簿記のことだ」
「「製造業」!?」
「簡単に言えば「パン屋」とか「豆腐屋」といった店が採用する簿記のことだな」
「「工業」って言うと、なんか大きな工場があって、そこで商品を作っているってイメージがあるけど、「パン屋さん」とか言われれば、イメージが湧きやすいですね♪」
「であれば、パン屋を想定して考えてみるが、パン屋は、どうやってパンを作って、販売している?」
「え~と、材料になる「小麦粉」等を買ってきて、パン職人さんが捏ねたりオープンを使って焼いたりして、出来上がったものを販売する人が店頭に並べて販売する…かな」
「今、美琴が言ったものを、細かく分類して考えていくのが「工業簿記」なんだよ」
「???」
「パンの材料である「小麦粉」「砂糖」などのことを、工業簿記では「材料費」と呼んでいる」
「でも、材料だけあっても、パンは作ることができない。パンを捏ねたり焼いたりする「職人さん」が必要だ。これらの人たちに支払った給料のことを「労務費」と呼んでいる」
「さらに、オーブンを動かすためのガス代や、トレイを洗うための水道代、店全体を動かすための電気代といった「水道光熱費」や「材料費・労務費には該当しないけど、製品を作るために必要な費用」のことを「経費」と呼んでいる」
「これら「材料費」「労務費」「経費」のことを「製造原価(製品を製造するためにかかった金額)」と呼んでいる」
「あれっ!?パンを「販売する人」に支払う給料は「労務費」じゃないんですか?」
「いい着眼点だな!パンを販売する人に支払う給料は、工業簿記では「販売費」に該当させる」
「製品を作ることに携わっていないから、費用の考え方を分散するんですよね!」
「その通り。これ以外にも、工場と本社が分かれていて、本社で働く従業員の給料や水道光熱費、本社建物の減価償却費などを「一般管理費」と呼んでいる」
「さっきの「製造原価」に、製品を販売するためにかかった費用である「販売費」と、本社でかかった費用である「一般管理費」を足したものが、製品の「総原価」になり、この総原価に利益率を掛けて算出したものが「販売価格」になるわけだ」
「…ということは、工業簿記によって「総原価」を出さないと、製品の売値は決められない、ということですよね!」
「そういうことだな!」
「工業簿記の勉強が進んでいくと「販売量がいくつなら、損もしないし得もしないか」(これをCVP分析(損益分岐点分析)と言います)といった計算をすることになる」
「その際も、どの費用がどの要素になるのかが重要になってくるから、初歩の「材料費」「労務費」「経費」の分類を理解することは、工業簿記を学習するにおいて重要だな!」
「なるほど!工業簿記が何なのか、何んとなく分かった気がします♪」
「それなら良かった!」
「さて、それじゃ今日は若林先生が出張でいらっしゃらないから、俺が若林先生の代わりに指導するぞ~」
「え~先輩、浅見川に散歩に行きましょうよ~」
「ちょっと、美琴!今は部活中よ!!デートなら、終わってからにしてちょうだい!」
「そういう問題じゃないような気がするんだが…」
「は~い!」
「先輩!今日は帰りにいつものあそこに寄って帰りましょうね!」
「(学校に居て「いつものあそこ」と言えば、駅から学校の途中にあるクレープ屋だな…美琴とのデート代と、俺のバイト代。これもCVP分析が必要、かな…)」
「先輩?どうしたんですか!?」
「いや、何でもないよ!」
「さぁみんな!今日は去年のパソコン大会優勝者である沢継先輩が来ているから、気合入れて練習するわよ!!」
chapter2 に続く
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