第56話 56

あなた、自分は悪くないのに、自分が悪いてなっていた経験はない?


私はある。クレコが失格になり、製作委員会予選も生き残りは8人。しかし、アンコが悪いはずなのだが、私は巻き込まれ敵陣営からの冷たい視線を感じる。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


学校の授業もそうだけど、時間だけ拘束されて退屈というか、つまらない。別にそれで頭が良くなるわけでもないしね。今、私が命懸けで走っているのかもわからない。それとも、これが青春ですか? 思春期の情緒不安定というやつなの?


「薄皮さん! 許さないわよ!」

「クレコ!? クレコ!? ウオオオオオ!?」

「卑怯だぞ! 薄皮さん! 酷過ぎるよ! クレコを電撃の中に放り投げるなんて!」

「なんとか言ったらどうなんだ! 薄皮さん!」

「・・・。」

「我らの大いなる女神! 薄皮さんはあなたたち下民と話す口はお持ちじゃないのよ! 汚らわしわね!」

「なにを!?」

「・・・。」


私は無罪だ!? 何もしていない!? 私が何の罪を犯したというのだ!? ただアンコが私を指さし、全ての指示は薄皮さんの命令ですとニタニタしながらアピールしている。このままでは悩み多き美少女女子高生の私のイメージが勝利のためには手段を選ばないヒールヒロインになってしまうじゃないか!? でも、自分の身の潔白を証明するために1日1度きりの覚醒の呪文を唱えるのも、もったいない。きっと決勝戦で私は私の想いの宿った言葉を必要とするからだ。それまで猫を被って可愛く生きるのだ。


「・・・負けるものか。私たちは諦めない。絶対に負けるものですか!」

「そうよ! 青春がいじめごときに負けるもんですか!」

「そっちがその気なら、こっちは製作委員会らしく言葉で戦ってやる!」

「みんな! クレコの敵を取るぞ!」

「おお!」


おお。向こうはなんだか青春してるな。いいな~。どうせなら私も向こう側にいた方がイメージが良いと思うのだが・・・ちょっと悩み過ぎかな? いや! やっぱり向こうの方がイメージがいい。こっちはどうみても悪役だもの。


「燃えろ青春! 私の心! ファイヤー!」

「悪しき者たちを清めたまえ! ウォーター!」

「全てを吹き飛ばせ! ウインドウ!」

「友の敵は必ず取る! アースシェイカー!」


おお! ここにきて正義の青春戦隊の必殺技攻撃! いいね。サイバー世界とはいえ、製作委員会の世界も独特なフィールドなのよね。もっと開始時に世界設定とかスキル有無しを熟慮してから開始すればいいのに。次回作、次回の戦いに期待ね。


「眠りで防げるか!? ギャアアア!?」

「煙幕を張っている暇がない!? ギャアアア!?」

「私の目隠しと技が違い過ぎない!? ギャアアア!?」


アンコ、ツブコ、ズンコ。あなたたちの死は無駄にはしないわ・・・なんてね。これで私の悩み事通り数が減ってくれた。8人の半分か。おっと、私を入れるのを忘れてた。


「これで、あとは薄皮さん1人。」

「勝負あったわね。」

「決勝にいく2人は私たちからよ。」

「薄皮さん。降参して自ら電撃に飛び込んでくれても構わないのよ?」


そろそろ始めましょうか。悩む価値もない戦いを。


つづく。

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