薄皮ヨモギの暗中模索

渋谷かな

第1話 1

あなた、悩み事はある?


誰にだって悩み事があるとか、他人から悩み事があるように見えないとか、私に関わらないで、迷惑な話よって感じ。


私にはある。


他人から見たら、どうでもいいことなのかもしれない。でも・・・私の悩み事は、私にとっては大きな問題よ。


物心がついた頃から私の悩み事は始まった。私の周囲の人間が私のことを特別な目線で見てくる。幼かった私は周りの人間のどこよそよそしい接し方を訳も分からず不思議そうに思っていた。


薄皮。


うすかわ。誰もが私のことを、そう呼んだわ。私の本名は、薄(すすき)皮(かわ)。決して、うすかわではないわ。それでも他人は幼心に私が傷つくことなんてお構いなしでね。


私は悩み事から決して逃げることができない。他人のあなたからすれば、つまらないしょうもないことで悩んでいるのねと思うかもしれない。それでも、私には重大な問題なの。


どうしてキラキラネームを私につけたの? カワイイ娘が将来、周りの人間から後ろ指をさされる人生を歩むことになると想像しなかったの? 私は両親を恨んだこともあるわ。


敵! 敵! 敵! 周りの人間が私のことを変な名前とバカにして差別して軽蔑して見下して笑っているように見えた。どうして私ばかり!? 私は暗闇の心の中を一人で逃げようと必死に走って走って走り続けた。


答えは無かった。どこまで逃げても、どれだけ解決策を考えても、私は私の名前と切り離せないと悟ったの。そして私、個人のくだらない悩みなど、地球の人口70億人から考えると70億分の1の悩み事でしかないことに気づいてしまった。


ちっぽけな存在の私。自分自身で悩み事を大きく思い込んでいたんだと気づいたの。その時、私の悩み事の世界は崩壊した。私は神に言ったわ。私の生まれてからの悩み事を悩んでいた時間を返せってね。


もし私に悩み事が無かったら、悩んできた時間が無かったらって考えた。そしたら今頃、勉強をして進学校に通っていたり、150キロのストレートが投げれるようになっていたかもしれない。自分の都合のいいように考えるようになった。


気が付いたら、私は、私をいじめていた周囲の人間と同じになっていた。他人と自分を比べることで他人を見下し、可哀そうな自分を慰めるような、そこら辺にいる最低な人間と同じになってしまっていた。


私は悩み事に押しつぶされそうな弱い哀れな自分の方が、他人を傷つける自分よりも好きだ、好きだと感じた。それは私が幼い頃から悩み事を自分の心の中に抱え込んできたからかもしれない。


もう一度、悩んでみよう。悩んでも答えが無いのが人生だという結論にたどり着いた私だけど、きっと悩むことにも意味があるはずよ。そうに違いない。昔、偉い人も言っていたわ。人間は考える葦であると。(意味は、知らない。)


どうして人は頭を洗うのか? どうして人はご飯をたべるのか? どうして私は生まれたの? どうしてあなたは生きているの? つまらないことだけど悩み出すと、どれもスリリングでミステリアスだわ。


悩み苦しんできた私だから言える。きっと自分の考え方や、悩んでいる悩み事を変えるだけで、何も変わらない毎日だけど、特別に見えるはず! ・・・はずよね。確証はないけれど、人生を楽しく生きるために、私は悩む人生を選ぶことにした。 

つづく。

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