第3話

数日が経った。ボクは毎日朝晩欠かさず水やりをして、掃除を終えたサーバルちゃん達が遊ぶのを見守って、料理を作って、みんなで寝る、という生活を繰り返していた。そして今日、ついに小さな芽が出た。


ボクは朝、その芽を見つけて、とても嬉しくなってすぐにサーバルちゃんたちに教えてあげた。みんなもすごく喜んで、花が咲くのが楽しみだね、と笑いあった。

ボクはその小さな芽を見て、あることを思いついた。小さな木の板を見つけて、尖った石で文字を書き、花壇の隅っこに立てた。


「かばんちゃん、それはなんて書いてあるの??」


「ひまわりって書いたんだよ。立派に育つための、おまじない。」


いつしかボクはすっかりひまわりに夢中になっていた。








それが起こったのは、芽が出てからまた数日後。いつも通り掃除を終えて遊んでいると、アライさんが突然倒れたのだ。ボクはその時としょかんで本を読んでいたのだが、青ざめたフェネックさんがボクの元へとんできて、慌ててアライさんの所へ向かった。


どうやらアライさんは熱中症だったようだ。サーバルちゃんとフェネックさんは大きな耳で熱を逃がすことが出来ていたが、アライさんはそうもいかず、暑さに耐えきれなかったようだ。部屋に運んで水を飲ませ、布団に寝かせる。助手さんが塩を持ってきてくれた。熱中症の時はこれを舐めるといいそうだ。


「まったく、倒れるまで遊ぶとはおバカにも程があるのです。」


呆れるように言っていたが、本当は心配だったのだろう。チラチラとアライさんの顔色を見ていた。


この出来事にサーバルちゃんとフェネックさんは相当堪えたらしく、気づけなかったと落ち込んでいた。特にフェネックさんは耳をぺったんこにして謝っていた。アライさんが、目覚めてから大丈夫だと言っても、その日フェネックさんは落ち込んだままだった。


それからしばらく、三人は外で遊ぶのを控えたようだ。午後はとしょかんの中でお昼寝をしたり、本の絵を見たりしていた。

その間、ボクはひまわりの世話をしつつ、色んな本を読み漁っていた。熱中症についても調べてみると、アライさんは意外と危険な状態だったらしく背筋がゾッとした。


フェネックさんはたまに夜に泣くようになった。夜中、すすり泣くような声がして起きてみると、フェネックさんが小さく縮こまって泣いていた。アライさんを失うかもしれないという恐怖が頭から離れないのだろう。


「フェネックさん」


他の二人を起こさないよう、ボクが小さな声で名前を呼ぶと、フェネックさんはビクッと反応した。


「こっちに来て、一緒に寝ませんか?」


そう言うとフェネックさんは意外にも素直にボクの布団へ潜り込んでくる。大丈夫、と頭を撫でる。夜のフェネックさんはなんだか甘えん坊だ。朝になると何故かいつも、元の場所へ戻ってしまっているのだけれど。


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