12 手の甲のしるし
ふいに訪れた真っ暗闇
彩りはすべてを失って黒く沈んだ
ほんのささいなことだった
気まぐれなのかもしれない
それでも自分には重大な出来事で
判断力も鈍るような世界ができあがる
存在することとはなにか
指定された席に座ればいいのか
名前を呼ばれたら返事すればいいのか
残さず給食を食べ切ればいいのか
それのどれもが当たり前の行いで
どれもが答えとは程遠い
痛くはないんだ
だって痛いのは嫌だから
それでも誰かにこの悲鳴を聞いてほしくて
せめて気づいてほしくて
薄くて小さな傷1つ
勇気のない左手はクルリとひるがえし
手首の見えないゴツゴツした甲を見せてくる
今日も自分は生きている
日々違う表情を見せる左手のそれは
毎日変身を成し終えている気がして
どこか誇らしげにも感じる
それでも気づかれるのは嬉しくて怖い
見てほしくないのに気づいてほしい
我が儘ばかり言える自分はまだまだ元気
これで自分が変わるとは思えない
ましてや外が更に生まれ変わると思えない
それでも1日は始まる
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