雑草


「君って強いね?」

花は雑草に言った

雑草は小さく笑って

「そうかもね」

と天を仰いだ


やがて花は枯れて

その瞬間まで見続けた

世界でたった一本の雑草は

それでも天を仰いでた



踏まれても痛覚の無いふりをして

過ぎ行く人々の後ろ姿を

おいかけて、おいかけて、目を閉じる



夢のない夢、眠りのない眠り

朝のない朝、夜の終わらない夜

枯れていくだけの世界で

枯れる事だけを待ち望む

過ぎて行く人々をおいかけて万華鏡を回すように

硝子の破片を突き刺して

流血だけの世界で

流出するだけの言葉で

淘汰されて消えていく幻花の如し

去り行く人々の後ろ姿を一瞥しながら

去ることを許されない雑草が

追いかけて、追いかけて、目を閉じる



やがて花は枯れて

それでも立ち続けた

世界でたった一本の雑草は

追いかけて、追いかけて、目を閉じる

踏みつぶされても立ち続ける

僕ら世界でたった一本の雑草だから

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る