第150話

 エレノアの裏で蠢く父の意図を勘繰り、リンスロットの小さい舌打ちが漏れる。






「さすがに遅過ぎやしないかい……」


 迫り来る脅威……既に放課後……僅かな猶予を与えられて、外国出身の魔法少女達は覚悟を決め、その時を待っている……。


 が、たまりかねたアンテロッティの声が、教室に跳ね上がる。


 魔法少女としての本懐を果たせないアンテロッティの苛立ちが、他の魔法少女達の想いを吸着し、教室内を満たす。




「御姉様……」


 ただならぬ評議院の企みを感じたリンスロットが、シルフィを掲げる……。




「くっ……」


「どうした……リンスロット……」


 力なくシルフィを下げ、怒りにも、憐れみにもとれる瞳を床に落とすリンスロットに、アンテロッティが尋ねた。




「マジカルリンクが、解除されていますわ……」


「おいおい……それって……」


「そうですわ……わたくし達全員、魔法少女ではないという事ですわ……」


『ええっ……』


 リンスロットの言葉に驚き、クラスメイト達がポーターを取り出し、そして試みる……。


『マジカルリンクが強制解除されています』


 虚しく響き渡る「無味無臭」なアナウンス……。




「御姉様……いえ、魔法評議院ですわ……」


 誰がこんな事を……およそ予想がつく答えを、重く尖った音質のリンスロットの声がせいする。


「評議院に能力を制限されているとはいえ、御姉様とオフェリアならこの程度の工作は造作もないですわ……」


「じゃあ、りおんのマジカルリンク解除も……」


「でしょうね……でもまさか全員のマジカルリンク解除とは……おそらくエリザベスさん、シフォンさん、予備役、退役組のみなさんにも……」


「マジかよ……」


「申し合わせた様なスーパーダークエネルギーの襲来……評議、いえ、父はわたくし達に何もさせないつもりですわ……」


「じゃあ、スーパーダークエネルギーは評議院が呼び寄せたって事かい……その、エレノアさんが」


「いいえ違いますわアンテロッティ……スーパーダークエネルギーを引き寄せたのは御姉様ではなく、わたくしの考えが正しければ……」


 リンスロットはそこで言葉を止める……。




「エレノア先生を利用して、私達の能力を奪ってリンスのお父様、いえ、評議院は何をしたいのかしら……」


「既存の世界を終わらせ……創り変えたいのでしょう……」


 ひばりの問いかけに、言葉を吐き棄てるリンスロット。


 ざわめく教室……。


「監理局もきっと機能停止しているでしょう……でもなんとかシルフィとのマジカルリンクを繋げないと……」


 思考するリンスロット……。

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