第142話
ロナール家にしてみれば、美しく「完璧」な時代だった……。
母親は「英霊」となり、ふたりの娘も盤石の実力。
時を同じくしての、欧州魔法少女全盛期……。
エレノアを中心に、世界は廻る……。
6歳にしてダークエネルギー壊滅戦に加わり、攻撃力、防御能力は既に他の魔法少女達のそれを遥かに凌いでいた……。
この時期、監理局本部はフランスのパリにあり、キャサリン、ドロシー、ひばり、りおんの「覚醒」を待つ北中米、南米、アジア・オセアニア陣営は魔法少女氷河期に入っていた。
エレノアの圧倒的能力……その妹リンスロットの「担保」……。
富、名声、名誉……全ては欧州にあり……。
裏社会の「傲慢」は、表世界に染み出し、勢いを増す……。
プラチナスタークラスに昇格したエレノアは、常に先頭に立ち、戦った。
家の為、リンスロットの為、友人、共に戦う魔法少女達の為……何も知らない世界の人々の為……。
そして……自らの存在の裏で「薄汚く巧妙」に世界を支配する大人達の為に……。
連戦……連勝……。
負けるなどという概念など存在すらしない時間が続く……永遠とも錯覚する程に……。
エレノア16歳……リンスロットが4歳に成長し、か弱い自我を垣間見せる寒いその日……。
終焉と希望が交差する……。
意外にも日本で好きになったもの……。
乳白色に満ちたバスタブに、官能的でしなやかな躰を滑り込ませるエレノア。
イギリスでは、シャワーで済ませていた「洗浄行為」……。
通過儀礼が「癒し」に変わった。
日本各地の温泉の入浴剤を日替わりで入れた湯船に浸かるこの空間が、今のエレノアをエレノアたらしめる唯一の時間……。
「はぁ…………」
後ろ向きでない、解かれた声……。
愛おしく躰を撫り、魂を「快」の方向へと誘う。
適度な温度と湿気……香り漂わす湯気……。
癒されてゆく魂……。
しかし「快」と「苦痛」は表裏一体……。
ぼんやりとバスルームの天井を眺め、魂の快楽を楽しむエレノアの自我と瞼はゆっくりと閉じてゆき、拭えないあの日の「真実」を深層自我で再生してゆく……。
第17次スーパーダークエネルギー壊滅戦……。
地球に迫る最大の危機。
ダークエネルギーの源泉……。
直径12キロの「暗黒母星」が迫る。
総勢348名の魔法少女達が、高軌道にて迎え撃つ特別シフト……。
この内9割が、欧州出身の魔法少女であり、通常スーパーダークエネルギー壊滅戦に招集される予備役、退役組は、エレノアの存在故に必要なしと判断された。
最強のエレノア……。
16歳の少女に全てが託される……。
最大の脅威に対し「余裕」すら漂う監理局と魔法少女達の心情……。
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