二年の秋~005
ともあれ、会場に戻った。兵藤と赤城が終始青い顔だったので、何があったとしきりに聞かれた。
なので木村があれこれそうよと。みんな俄然興味を抱くのには充分だった。
「おい松田、ちょっと腕相撲しねえ?」
そう言って空いているテーブルを引っ張ってスタンバった河内。
「腕相撲?別にいいけど……」
渋った訳じゃないが、何となく足取り重くそのテーブルに向かった。
「じゃあ私がレフェリーね!」
しゃしゃって来たのは倉敷さん。テレビかなんかで見たのだろう、握らせて肘をテーブルに着かせて、その上から両者の手に添えた。
「レディ……」
ぎりっと力を込めた河内。一気に行こうとの魂胆が見える。
「GO!!」
やはり河内は一気に行った。勢いと体重を腕に乗せて。
だが、松田の腕は動かない。河内のパワーを楽勝とまではいわないが、完全に上回っていた証拠だ。
「「「マジか!!」」」
誰か知らんが同じ単語を述べた。マジだよ、見たまんまだ。
「おらあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
河内のMAX!!顔も真っ赤になっているし!!その甲斐あってじりじりと押していく!!
「く、ちょっとやべえな」
言いながらもヤバそうな雰囲気は皆無であった。今までの奴等よりもパワーがあるな、程度しか感じなかったんだろう。
ぐっと力を込めた松田。手首が内側を向いた。と言う事は、河内の手首は外側に向いてしまったと言う事だ。
「やべえやべえやべえやべえやべえ!」
焦るが、もう無理だろ。実際其の儘河内の手の甲はテーブルに着いてしまったのだから。
「winner吉彦!」
松田の腕を取って掲げた倉敷さん。物凄いドヤ顔だった。
「マジか……松田すげえなお前」
「いや、久しぶりに焦った」
笑いながら述べられてもだ。焦った感じなかったんだが。
「よし、次は俺だ」
やっぱりしゃしゃったヒロ。全員納得だった。
「今河内とやったばっかだから疲れてんだけど」
「そうか。その状態のお前に勝っても自慢にはなりゃしねえか。よし赤城、来い」
「力なら自信があるぞ」
乗り気の赤城、テーブルに肘をつく。
「レディ……」
ぐっと力を込めた両者。手首を自分の方に向ける。
「GO!」
「だらあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
顔を真っ赤にして押す両者だった。さっきの松田の涼しい表情見ただろうに。
腕相撲にしては長時間戦っていた。両者とも雄叫びを上げて、顔を真っ赤にして。
だが、ヒロよりも赤城の方がスタミナがあったようで。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
叫びながら自分の手の甲がテーブルにぶち当たる瞬間を見ていた。
「winner赤城君!」
「よし!」
「ち、認めるぜ。パワーだけは一級品だ」
「お前も凄かったぞ大沢」
なんか両者握手を交わしているし。なんかギャラリー拍手しているし。
「なんであんなに盛り上がってんだ……」
「平和的にナンバーワンを決めているからでしょ」
チキンをもぐもぐしながら麻美さんが言う。
「ナンバーワン?」
「そ。誰が一番強いか。ほら、喧嘩だったら甲乙付け難いし、誰もガチで戦いたいとは思わないでしょ。だけど腕相撲ならその場のノリだから」
「そう言うもんかねえ?」
「うん。ほら、証拠に片山君が大雅君に挑んでいるじゃん」
麻美が指差す方向を見ると、確かにそうだった。つか、すでに両者スタンバっていた。
「ああああああああああ……」
落胆の声と共に大雅が勝者のコールを受けたし。
「片山はパワーもない方だな……」
「そうは言っても体育会系だから有る方でしょ」
確かにそうだろうが、松田とやったら1秒ももたないんじゃないのか?
「よし木村、来い!」
さっきのリベンジ宜しく、兵藤が木村を指名する。
「呼んでるよ。明人、頑張って!」
「ああ……まあいいか…」
やる気ないオーラをバンバン出しながらもテーブルに向かう木村。
「winner木村君!」
「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
余程悔しかったか、テーブルに拳を叩きつけていた。
「まあまあやるじゃねえか兵藤」
「これでお前には二連敗だ。なんかで絶対に勝つからな!」
お前に木村はどうやっても倒せないと思うけど。あいつ頭もいいんだぞ。勉強勝負でも完敗するぞ。
「よし緒方!左だ!」
赤城、事もあろうか、俺を指名する。つか左って?
「さっき大沢と右で戦っていたから、左で勝負しろって事でしょ」
「ああ、流石に疲れ抜けねーか」
まあ、こういうのはノリだからと向かう。
「勝つよね」
「当たり前だろ」
「腕相撲は半殺しにできないからそのつもりでね」
逆に聞きたい、どうやれば腕相撲で半殺しにできるのかを。まあ、一応それ目指してやってみようか。
テーブルに着いて左腕の肘を置く。
「く、構えだけでもこうも迫力があるのか……」
引き攣る赤城だが、腕相撲の構えで迫力ってどうなんだろうな?とっても意味が解らんのだが。
「レディ…」
力を込める。握力も高める。
「GO!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
赤城、しょっぱなから渾身で来やがった。雄叫びも挙げていやがるし。
だが、やっぱパワーはすげえ。押されているし、現に。
だったらこっちもフルパワーだぜ!!
「あ!!」
握力MAX!赤城、顔を顰める。
「ああああああああ!!ああ!!」
体重を乗せて巻き返す!!ギャラリーが「おおおお~……」とか言った。
「く、くくく……パワーもそうだが、握力が……っ!!」
俺はハードパンチャーだ。よって握力はかなりある。パンチ力に比例するからだ。
「ああああああああああああああああああ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
流石に一気にはいけないか。向こうも根性で持ち直したし。
支えていた右手のせいでテーブルがギシギシ言っている。流石にぶっ壊せるとは思わないが。壊れたら弁償しなきゃいけねーのかな?
「それはちょっと勘弁だ!あああああああああああああああああ!!!」
テーブルがぶっ壊れる前に勝つ!渾身を込めて押す左腕!
「く、くくくくくくくくくあああああああああああああああああああああああああ!!!」
がん!!と赤城の手の甲がテーブルにヒットした。
倉敷さん、俺の腕を取り――
「勝者、緒方君!」
おおおおおおおおおおおおおお!!と歓声が湧く。意外と名勝負だったのかな?
「や、やはり力でも負けるか」
悔しそうに。しかし、晴れやかに。
「まあ、いい勝負だったんだよ」
「なんだその言い方は?」
だって解んねーから。ギャラリーの歓声でそうなんじゃねーかなって思っただけだし。
「流石だな緒方。次は俺とだ」
トーゴーがしゃしゃって来る。
「今赤城と戦ったばっかだから疲れてんだけど」
「そんな状態のお前に勝ってドヤ顔すんだよ、察しろよ」
こいつ、清々しいほど最低だな。綺麗事が一切ない。
「待てトーゴー。緒方と戦いたいんだったらまず俺を倒さなきゃ」
生駒、ここで参戦。つか、お前なんで俺の守護みたいな事言ってんの?
「生駒か。お前とも一度やってみたかった」
なんか轟轟と燃えているトーゴーだった。多分生駒が勝つだろ。パワーは生駒の方があるんだし。
はい、予想通りに生駒が勝ちました。だが、いい勝負だった。
「よし、この調子で、松田、左だ」
その生駒が松田を指名する。
「俺?別にいいけど、お前疲れてんじゃねえの?」
「だから左だよ」
そうか、と言ってテーブルに肘を置く。
「レディ……」
生駒の顔つきが変わった。超真剣モード。バイトモードの生駒状態になった。
たかが腕相撲で!?そこまで真剣になんなくてもいいだろ!?
「GO!」
ご!!と両者同時に押す。腕は真ん中から動いていない。
「おいおい、生駒の野郎、松田と互角じゃねえか」
ヒロの言う通り、互角に見える展開だが……
「いや、松田の方が余裕がある。生駒は既に顔が真っ赤だ」
大雅の指摘通り。生駒の方に余裕は感じられない。
「く、やっぱ強いな生駒………」
「ビクともしないお前に言われたくない……っ!」
汗まで掻き始めた生駒。松田の方はまだ全然余裕がある感じだ。
つか、生駒の力にビクともしねーの!?やっぱ松田パワー馬鹿だ!!
ぐぐ、と押し始めた松田。生駒、必死にあがらう。手首をどうにか内側に回そうと必死だった。
そんな小癪な真似なんか通じないと、押す!
「くくくくくくくくく!!!」
テーブルギリギリで耐える生駒。だけどあれは時間の問題だな……
「っっっか!」
がん、と手の甲が当たった。勿論生駒の。
倉敷さん、コホンと一度咳払いし――
「winner吉彦!」
もう嬉しそうに松田の腕を掲げた。
「はー、はー、強いな松田……」
「そう言っても、お前って二連戦だろ、体力が減っているからだよ」
それを差っ引いても松田の方が強いだろう。まだまだ余力がありそうだから。
「よし緒方、今度は右だ!」
「まだやるのお前!?」
赤城から再戦要求が来た。右の疲労が回復したからだろう。
「俺は右利きだから、当然だが右の方が強い」
「まあ、いいけど……」
こいつ意外としつこいな。完膚なきまで叩きのめした方が後の為にいいかもしれん。
右の肘をテーブルに置く。赤城の右手を軽く握った。
対して赤城はMAXで握り返す。こいつ、一気に攻めようって魂胆か。
「レディ………」
合図があっても俺は脱力したまま。赤城はギリギリと力を込めた。
「GO!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
案の定一気に押してきやがったが、想定内だっての!
「あ!」
腕を瞬時に内側に巻く。赤城、目玉が飛び出んばかりに剥いた。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!」
そのまま一気に押す!!テーブルを破壊する勢いで押し倒す!
がん!!!
赤城の手の甲がテーブルに着く。一気を狙ったが一気に返されたと言うね。
「winner緒方君!」
おおおおおと歓声が湧いた。まさかあっさり決着とは思わなかったんだろう。
そして手の破壊を目論んだ訳だから……
「……………く!」
赤城が右手首を押えて蹲った。
「捻挫でもしたか?」
「……そこまでは行っていないと思うが、凄まじい力だな……」
そうか、と言って踵を返した。大丈夫か?もお前の力も凄かったも言わず。
逆にこれに懲りたら絡んでくんなとのオーラをバンバン出した。相手すんのが面倒なんだよと。
「木村、良かったらやってくれないか?」
山塊の沖田君が木村に挑戦した!こりゃびっくりだ!
「いいけど、俺はそんなに力ねえぞ」
「連山のストリートファイトチームのリーダーを一方的に倒してそう言う?」
あれは兵藤が雑魚だからだ。とは流石に言えんか。俺なら確実に言うのに。
結果はまあ、予想通り。木村の圧勝で終わった。
「ふい~…やっぱ強いんだな」
「いや、お前も相当なもんだぜ」
一応気は遣ったようだな。山塊とは全く絡みがないから。
「大雅、ちょっと勝負しねえ?」
「片山とやって疲れているんだが」
「じゃあ左。それならいいだろ?」
トーゴー対大雅。ここも見どころだろう。まあ、大雅が勝っちゃったけどな。
「つええな。兵藤よりも確実につええ」
「毎日1,5キロの鍛錬用木刀を振っているからね。そこそこじゃないと困るのは俺の方だよ」
そんなの毎日振っているんだったらそうなるか。俺も昔、パワーリスト付けて鉄アレイもって授業受けていたなぁ……
他の奴等も何となく勝負をして、なんと植木君も参戦したが、何となくベスト4が揃った。
俺、松田、木村、大雅だ。
「じゃあ準決ね。吉彦、木村君」
やっぱり仕切る倉敷さんだったが、こういうのはノリだ。
「言っておくが、お前より確実に弱えぞ俺は」
「毎回言っているよな、それ」
木村は確かにそんな事毎回言っているが、負け無しだった。そう言って油断を誘っているのだろうか?
そして毎回そう言いながらも負けるつもりはさらさらない顔だった。松田にガンくれているし。
「睨むなよ。おっかねえだろ」
「緒方よか数倍マシだと思うが」
「違いないか」
だから俺を引き合いに出すなと言うのに。なんで俺基準なのみんな?
「レディ……GO!!」
「ふっ!!」
開始と同時に全力の木村。だが、松田はびくともせず。
「マジか!?動く気配すらねえ!!」
「っち、ちょっとヤバいか」
松田の方は全く余裕に見えるのに、何がヤバいのだろうか?
びくともしない松田が動いた。自陣に向かって。
「く!」
木村が汗を流してしかめっ面を拵えて歯を食いしばって耐えている。だが、時間の問題だ。
「……っち、強いな木村」
「ば、馬鹿言ってんじゃねえ!!お前の方だろ!!」
いや、強いってのは今までの奴等よりも強いって意味だろ。
そのまま徐々に押し負けていく。ああああ!!とか言っていたが、抗いも空しく――
がん!!
倉敷さん、コホンと咳払いをして松田の手を取った。
「winner吉彦!」
松田の腕を掲げた。もう嬉しそうに。
同時に歓声が湧く。ああ、これは事実上の決勝戦かもな。
「やられたぜ松田。本当につええな」
「いや、お前も強かったよ」
健闘を称え合い、握手を交わす両名。大雅、その二人に拍手を送った。
「いい物だね。スポーツってのは」
「これってスポーツだったのか……」
「腕相撲は立派なスポーツだよ」
まあ、選手もいるので競技として成り立っているんだろうが、これはただの遊びじゃないのか?
「次は?」
「あ、俺達か。行くぞ緒方君」
「お前ノリ良すぎだろ」
引くレベルだぞ正直。
「緒方君も力に自信があるようだが、俺も負けちゃいないよ」
そう言って笑うが、俺って力自慢した事はないんだが…パワー自慢なら力で上回るとはよく言うが。
「松田、どっちが強いと思う?」
「え?う~ん……ちょっと解んねえな」
木村と松田の会話が聞こえた。思った事言ってもいいんだぞ。友達同士、言いにくいって事もあるだろうが、殆ど大丈夫なんだから。
「GO!」
おっと、呆けている間に合図だぜ!
とか言いながらも大雅とほぼ同時に力を込めた。結果中央で膠着状態だ。
「いい勝負じゃねえ?若干大雅が押しているか?」
「隆は力馬鹿だからな。解んねえぞまだ」
河内とヒロの会話が聞こえた。やっぱ少し出遅れたか。その分押し負けているように見えるんだろう。
しかし、マジ強いな大雅。今までの奴等で一番だ。
「あ!!」
「っち!!」
気合を込めたのを察したようで、さらにパワーアップして押してくる。
徐々に俺の手の甲がテーブルに近くなっていく!
「これは大雅の勝ちか?」
生駒の声が聞こえたぞ。まだまだ余裕なんだよこちとら!
今証拠を見せてやるよ!
「あああああああああああああああああああああああああああ!!ああああああああああああ!!!!!」
超馬力で押し返した。テーブル中央で再び膠着状態になった!
「あそこから盛り返すか!流石緒方君だ!」
「盛り返しただけで終わると思うなよあああああああああああああああああああああ!!!」
瞬発力で手首を内側に巻いた。
「しまった……!」
「おせえ!」
体重を乗せて押していく俺。大雅がじりじりと後退していく!
「不味いな……!」
顔を真っ赤にしてそう言うが、言葉に出すのはまだ余裕がある証拠だろ。
「だけど勝つのは俺だ!!決勝で松田が待っているんだからな!!」
「それはこっちの台詞だ!!」
大雅の握力が増した。またまたパワーアップしてきやがったか!
俺相手に出し惜しみかよ?随分余裕じゃねーか大雅。
その余裕をぶち砕く。単純なパワーで!!
「ああああああああああああああああああ!ああ!!!」
「くくくくくくく!!!」
がん!
倉敷さん、コホンと一つ咳払いの後、俺の手を掲げた。
「winner緒方君!」
歓声が凄い事になった。今のは名勝負だったからだろう。
「やはり強いな緒方君」
「お前もな。あそこまで粘られるとは思ってもいなかった」
そう言って握手。スポーツマンシップに則っている感じがするだろ?
「じゃあ10分休憩ね。決勝はその後」
「休憩を挟むのか……」
「俺は疲れたから休憩は有り難いかな。お前とは万全じゃないときついと思うし」
松田がそう言うのであれば、だ。
「解った。飲み物でも飲もう」
しかし、松田の奴、負けるとかじゃなくきついかよ。あいつ、心のどこかで自信があるな。
まあいいや。俺相手には余裕でいられないて事をきっちりと教えてやらなきゃな。
「はいダーリン、ちょっと温くなったけど、コーヒー」
遥香が実に気の利いた事をしてくれた。有難い事この上ない。
「ありがとう。やっぱコーヒーだよな、欲しいのは」
くっと煽る。うん。普通だ。不味くも無く旨くもない。どこぞのボトルコーヒーだこれ。
「松田君、本当い強いんだねぇ」
「ああ、うん。パワーに関しちゃこの中で一番だろ」
実際そう思う。力であいつに勝てる奴は少なくともこの場にはいない。
「じゃあダーリンも負けちゃう?」
「勝つつもりではいるぞ」
実際善戦するだろうとの読みだが。要するに多分負ける。
まあ、別に負けてもいいんだ。だけど簡単にはやられないからな。
「赤城君も力自慢だったけど?」
「ああ、あいつは4番目くらいだろ」
「4番?」
小首を傾げながら。可愛い。
「俺、松田、大雅の次あたりだって意味だよ」
「ふうん……この中で4番目だってのも凄いよね」
まあな。実際ヒロに勝ったしな。力勝負だったら木村にも勝ってるぞ。
「緒方、時間だってよ」
律儀に東山が知らせに来た。お前腕相撲大会に参加しなかったような?
その旨を尋ねると――
「やったよ。若山に負けた」
若山君に負けたのかよ。若山君結構強いんだな?
「なんだかんだ言って紅蓮メンバーだからな。空手だってやっているし」
「まあ、そうだが、まさか負けるとはな」
「俺別に力自慢じゃねえから。しがない苦労人だぜ?」
おどけるように。まあ、喧嘩の強さは腕力だけじゃねーからな。
「んで、松田に勝てんの?」
「易々と負けるつもりはない」
「……マジか…松田が一番だって事かよ」
慄く東山。木村相手に余裕だったんだぞ。そりゃそうだろ。
「まあ、とにかく頑張ってくるわ」
そう言って松田の待つテーブルに歩を進めた。
「……バリバリやる気じゃねえか。目が据わってんぞ。こええだろ」
「……目つきが悪いのは生まれつきなんだけど……」
ちょっとしょぼんとする。松田、いやいやとか焦っていた。
「じゃあ吉彦、緒方君、手を中央に」
「ほ、ほら、試合だってよ」
「……おう………」
「悪かったって!そんなにしょぼくれんなよ!」
同情を買って油断を誘う作戦だよ。いや、実際しょぼんとしているけども。
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