地域活性化友好交流会~012
「飯終わったか?これはデザートだ」
強面店長、ワゴンを引っ張って登場。全員の顔が強張った。
「あ、あの、たくさんでしたので、みんなもうお腹いっぱいで……」
「デザートは別腹なんだろ?」
横井さんが頑張って断ろうとしたが、店長知らん顔でどんどんテーブルにデザートを置いて行く。
「前菜はフライドポテトだったから、ゼザートは大学芋にしといたぜ!」
がっはっは!!と豪快に笑って引っ込んでいく。いや、有難いよ?有難いけど、この量……
「……ねえダーリン。大学芋ってさ、大皿に盛られて出てくるものじゃないと思うのよね」
「全くの同感だ。だがまあ、敢えて言うんなら、みんなで摘まめって事ならありだ」
「そうね。そうだけど、その大皿6つもあるのよね。つまり、各テーブルに一つって事じゃないかな?」
まあ、そうだろうな。常識で考えるんだったら。
「それを人数割りしたとして、お一人様この取り分け皿3つくらい必要に見えるのよね。目の錯覚かな?」
「うん。目の錯覚だよそれ。あ、言っておくけど、俺大学芋あまり得意じゃないからいらないから」
俺の言葉をきっかけに、野郎どもが声を上げた。
「ああ、俺は甘いもんあんま好きじゃねえからな。綾子、俺の分食っていいからな」
「な、波崎、流石にあの肉の後にこれは無理だ……」
「さゆ、すまないけど……」
全員が全員、女子に押し付けようと必死だった。女子って芋好きなんだろ?これは男子から好意だから受け取れ。そして食え。残さずに。
しかし女子も腹いっぱい食った訳で。
「いやいやダーリン、これ流石に厳しいよ。ねえ麻美さん?」
「そうだよ。馬鹿なんだから何も考えずに口に入れるだけでいいからさ」
何でディスられるのか解らんが、否は否だ。
「お、緒方君。流石にこれは無理……」
鮎川さんに懇願されるも、君のおかず結構食べたの知っているよね?入る余地ないと思わない?
「お、緒方、私のもお願いしていい?」
上杉が心底申し訳なさそうに言ってくるが、人間にはできない事があるんだ。そしてこれを食うのは俺にはできない。少なくとも今の腹では。
「ちょ、明人、流石に無理だよコレ」
向こうでは黒木さん相手に断り続ける木村。河内はああ、とかうん、とかしか言わないが、押し付け作戦は横井さん相手には無理じゃねーかな?
「正輝、これは流石に無理。解るよね?」
「解るけど、俺も無理だって知っているよな?」
こっちは無理無理言い合っている最中か。
「……容器は?」
春日さん、容器の問題じゃねーんだよ。そうじゃなくともほぼ全員容器に入れたの見たよね?
トンカラは俺が全部持ってく事になったし、木村は八宝菜だし、生駒は天ぷらだし、大雅は煮魚、ヒロは焼肉。大皿全部俺達が引き受けたんだから。
「……そうだ!春日ちゃん、容器頂戴!」
麻美は持って行くことにしたのか。ホントは好意のデザートだから全部ここで食って欲しいが、仕方ないかな。
春日さん、容器を持って来る。
「一応聞くけど。食べたい人いる?」
全員無言。春日さんでさえも。
「春日ちゃんは?」
「……私もちょっと食べ過ぎたから」
国枝君が申し訳なさそうな顔をしている事から、国枝君の分も頑張ったと推測。つうか、つまりは俺達男子よりも食べている事になる。藤咲さんや里中さん、よしこちゃんのも頑張っていたし。
んじゃあ、と大皿に盛られた大学芋を次々と容器に入れていく。
「すげえな……28パックかよ……」
ごくりと唾を飲む松田。28パック!?どんだけ盛ったんだよ!!おかずのあの量でも無理だってんのに、芋こんだけくれるのかよ!!ありがとう!!だけどもういいからな!!
「んじゃはい」
その28パックを俺の前に滑らせる。
「うん?なんで?」
「何でって、隆が持っていくからだよ」
「お前マジふざけんな!!こんなにイモ食えるわけねーだろが!!」
せっかく容器に分けたんだから28人で分担して持って帰ればいいだろが!!俺一人に押し付けんな!!トンカラもあるんだぞ!!
「隆だけに食べろって言ってんじゃないよ。おじさん、おばさんにも食べさせてって言ってんの」
逆に何言ってんの?と返される。
「28パックも食う訳ねーだろが!!だったら28人で分担して」
「違う違う。隆のおじさん、おばさんには日ごろみんなお世話になっているから。この期に少しでも返したいってだけだよ」
ケロッと絶対に嘘だとバレているのに言い切るとは、流石麻美だ!
「ああ、そうだな。緒方ん家に行けば必ずゴチになってっからな。少なくとも俺はお前の親父さんやお袋さんに食ってもらいたい」
「そうね。私もいつかお返ししなければと思っていた所だったし、いい機会を頂いたわ」
河内と横井さんが好意と言う名の押し付けを綺麗事を述べて強硬した。
「そうだね。俺なんかわざわざ南海からよく来てくれたと言われて持て成してくれるからね」
「そうなの?私は一度しか行っていないけど、正輝がそんなにお世話になっているんだったらね」
大雅のはホントの好意だと思いたいが、橋本さんはただ乗っかっただけだろ。君って大抵麻美か遥香の家に行っているんだし。
「しかし、いくらなんでも28パックは……」
「じゃあシロ、持ってく?」
「…………すまん緒方」
折れんなよ生駒!!持っていくと言ってくれ!!頼むから!!
「じゃあ多数決はどうだ?緒方にみんなやるって言う人、手を挙げろ」
木村の号令で全員キリッと挙手をした!!多数決じゃねーよ!!生贄決めただけだろ!!
「こうなっちゃお前には気の毒だが、持って帰るしかねえな隆」
「ヒロ、お前「いらねえ」」
聞く前に拒否るとか!!気の毒だと思っちゃいねーだろ絶対に!!
その時、視界の端で兵藤が容器に何か入れている姿を発見。
「緒方、これも持ってってくれ」
渡されたのは、序盤も序盤で登場したフライドポテト。まだ残ってたのかよ!しかも5パックとか!!
「流石に芋ばっかじゃ……」
「だったら八宝菜も持ってくか?」
「ふざけんなよ木村。八宝菜担当はお前だろうが」
何をちゃっかり押しつけようとしてんだよ。大人しく持ち帰れ!
「いや、だからな、俺ってトンカラと大学芋押し付けられたんだよね?解るよね?」
「押しつけたんじゃなく、隆の担当がトンカラで、大学芋はおじさん、おばさんと一緒に食べてって好意だよ」
「絶対に嘘だと思うが、まあ、そこは飲みこんでもいいとして、だったらフライドポテト5パックいらないと思わない?」
全員首を横に振った。思わねーのかよ!!
「いやいや、あのな、あ、そうだ、それこそ兵藤、お前フライドポテトもしゃもしゃ食っていたよな?好物なんだろ?」
「ああ、俺の好物をお前にいっぱい食わせてやりたくてさ」
実にいい笑顔で言い切りやがった。物は言いようだよな。意外と嬉しい物言いだったぞ。
「赤城も「すまん緒方。俺には不可能だ……」ま、まあ、お前はしょうがないかなとは思うよ、うん」
小食だからな。これ以上食わせようとするのは虐めのような気がしてならん。
そこで場を見る俺。大物は粗方片付いたが、まだまだおかずは残っている。
「よし解った。フライドポテトは有り難く頂く。だが、これ以上は本当に要らん。どうしても押しつけると言うのなら本気でぶち砕く!!」
「大人気ないなぁ……」
「殆どお前のせいなんだぞ麻美!ちょっとは反省しろ!」
お前が押しつけたからこういう流れになったんだぞ!!これ以上はマジでいらんからな!!
さて、喋っている間、全員箸を置いているしで。
「これ以上はもう食わないでいいんだよな?」
全員頷く。
「じゃあ残ったもん持って帰れよな。魚のフライまだあるぞ小鉢系は空にしたけども」
場にはまだ魚のフライと刺身が残っている。
「お刺身は痛むから一番近くの家の人が「俺はいらねーからな!お前持って帰れ!」」
俺に刺身を押しつけようとした麻美に釘を刺す。麻美、「ちっ」と舌打ちをした。
「じゃあ大沢「お前が持って帰れよ、お前ん家も近いだろ」」
ヒロに押し付けようとした麻美に逆襲したヒロ。麻美、「ちっ」と舌打ちをする。
「大雅君はお魚が「生物は流石にダメだろ」」
大雅に押し付けようとした麻美だが、正論で退けられた。麻美、「ちっ」と舌打ちをする。
「まあまあ、確かにお刺身は厳しいよ。だからみんなでここで食べていこう?」
波崎さんの発言に誰も返事をせず。誰も食いたくねーんだな。うん。
「じゃあ、取り敢えず魚のフライの処遇を決めようぜ。誰が持って帰る?」
河内の振りにもやはり誰も返さず。持って帰りたくねーんだよ、誰も。そしてここでも釘を刺す。
「おい、さっき俺はフライドポテト折れたんだからな。俺は除外しろよ河内……」
「そこまでおっかねえ顔しなくてもいいじゃねえかよ……」
おっかない顔にもなるだろ。トンカラに大学芋、プライドポテトだぞ?しかもこの量だ、消費するまで何日掛かると思ってやがる。
「緒方の言う通りだ。八宝菜は俺が持って帰る事になったんだ。俺も除外して貰うぜ」
「焼肉は俺が持ち帰る事になったんだから、俺も当たり前に除外だからな」
「ああ、俺天ぷらこうだから。勿論俺も除外だよな?」
「わざわざ南海に煮魚持って帰る羽目になったんだ。俺も当然除外にして貰う」
木村、ヒロ、生駒、大雅が険しい顔で権利を主張する。流石の河内も愛想笑いで頷くしかなかった。
「じゃあ河内君、お願いできるかしら?」
横井さんの発言に目を剥く河内。
「ちょ、黒潮まで魚のフライ持って帰れと?」
躊躇なく頷いて。
「的場さんにもおすそ分けしたらいいわ。君一人、家族の分でも多いと言うのなら」
「で、でも持って帰るっつっても、俺単車だし「私のリュック貸すよ」…………」
断る口実を遥香によって潰させた。黙ってしまう程続く言葉が見つからなかったようだ。
「じゃあお願いできるわよね?」
「…………はい………」
ついに折れた河内。お前横井さんの言葉には絶対服従だからな。100パーそうなるだろ。
「……春日ちゃん、俺にも容器くれるか?」
「……すでに持ってきてある」
指差した方向に置かれていたのは、透明な容器。それを力無く受け取り、魚のフライを詰め込んだ。
「残るはお刺身か……」
多少取り分けて摘まんだとはいえ、まだまだある刺身。まぐろとタイとイカである。
「お前等ここで食っていけ。俺は魚のフライがあるから除外だ」
河内も権利を主張しやがった。まあ、俺も同じことを言うから何も言えんけど。
「ご、ごめん、ホント無理」
「わ、私もこれ以上お腹に入らない…」
鮎川さんと上杉が先陣切って拒否した。まあ、彼女たちは初見だからしょうがないとは思う。
「トーゴー」
「無茶言うな。入る余地がねえ」
「じゃあ松田」
「う~ん……じゃあ……少し頑張るか」
大体一人前くらいマグロを持っていく。そしてこう言った。
「俺、義務は果たしたよな?」
あの野郎、一人前のマグロ食うからもういらんと遠回しに言いやがった。しかも勧めにくい『義務』とか出しやがって。
「玉内は……あ、ボクサーだから駄目か」
「悪いな松田。本心では頑張りたいが」
全員こう思っただろう。絶対に嘘だと。
「赤城は……これ以上はくたばりそうだな……」
「す、すまん松田……」
涙を溜めなくてもいいだろうに。別にしょうがないからいいとみんな思ってるから。
「兵藤」
「あ~……仕方ねえか……」
兵藤、タイの刺身を約一人前持っていく。義務は果たしたと言わんばかりに。
だが、たかが二人前消費した程度だ。まだまだ刺身はあるのだ。
「えっと、植木君はどうだ?」
松田に振られて咄嗟だろう、頷く。
「そうか。じゃあ頑張ってくれ。取皿これな」
松田から取り皿を受け取ってイカの刺身を約一人前持って行った。
「植木、それってあんまりじゃない?」
よしこちゃんが咎める口調だった。
「え?だけどお腹いっぱいだから」
「みんなそうだっての。持ち帰る人も多いんだから。緒方なんかあれだよ?」
容器の山を指さして。殆ど麻美のせいなんだけどな、これ。
「う、うん。じゃあもうちょっと」
俺よりマシだと奮い立ち、マグロ、タイと、それぞれ約一人前持って行った。
「え?足りなくない?」
「ちょこれ以上は……」
「緒方なんかあれだよ?」
再び俺の容器を指さして。
「じ、じゃあもうちょっと……」
「ああ、もう、貸して」
取り皿を奪い、もっそり刺身を盛った。3人前くらいか?
「このくらいならいけるでしょ」
絶対いけないのに頷いた植木君だった。しかし、取り分けられたのだ。これは根性決めて頑張るしかない。
半分くらいになったが、刺身はまだある。
「残すか?」
「馬鹿、好意で大盛にしてくれたんだぞ。お残ししたら不義理になっちゃうだろ」
残すと言った河内を窘める俺。事実そう思うし、何よりお残しは気分的に良くない。
「この店は来るたびにサービスよくして貰ってっからな。緒方の言う通り不義理はいけねえ。仕方ねえ。もうちょっと頑張るか」
木村が刺身を持って行く、イカ約1人前程。
「河内君は?」
「え?魚のフライ持っていく事になったし」
「木村君は八宝菜を持ち帰るのだけれど」
「…………はい…」
すんごいしょんぼりしてマグロの刺身を持って行く。つか、1人前じゃなくもっと持ってけよ。
「……大丈夫だよ?無理だろって店長さんも言っていたから」
「いや、残すのは駄目だ。よし波崎、俺にも取り皿取ってくれ」
ヒロもタイとマグロを持って行った。波崎さんも頑張ってマグロを持っていく。
「ダーリンは?」
「断る」
こんなに持ち帰り品あるんだぞ。刺身くらいみんなで頑張れよ。
「じゃあ私が。本気でヤバくなったら助けてね」
「おい。それは俺が食う前提」
文句を言う前にイカの刺身を持って行った。あれ俺の口に入るんだろ絶対!!
「じゃあ私もマグロを……」
「おい綾子。俺は絶対に食わねえからな」
「……を、ちょっとだけ」
木村に丸投げしようとした黒木さんだが、凄まれてちょびっとしか持っていかなかった。なんだよラクロス同好会よー。もうちょっと気合見せろよな。
「……じゃあ私が……あ、いや、ちょっと待って」
春日さん、取り皿に取る前に厨房に向かった。戻ってきた時にはどんぶりを持ってきていた。
「それなんだ?」
「……ご飯だよ?」
覗いてみると、確かにご飯だ。あれだけ食ってご飯も食べるの?
そのご飯に刺身を盛っていく。マグロ、タイ、イカと、全種類1人前以上を盛った。
そこに醤油で溶いたわさびを掛けて……
「成程、海鮮丼にするのか」
「……こうすれば多少は頑張れるから」
頷く。ご飯食べないで刺身だけならもっと食べられると思ったが、黙って頷く。
「わ、私も頑張ります」
「幸、無理すんな。くたばる寸前の顔色だぞ」
藤咲さんの気持ちは嬉しいが、ご飯は美味しく食べるものだ。決して紫の顔色になってまで食べるものではない。
そこで彼氏たる東山がようやく動いた。
「あとは任せろ。お前は休んでろよ」
そう言って刺身全部自分の席に移動。全員「おお~」と感嘆の声を上げた。
「戴きます」
手を合わせて刺身に喰らい付く。結構ハイペースで口に運んでいく。この調子ならば完食……
「ギブ」
「ふざけんなよ東山。1人前も食ってねえだろ」
突っ込んだのはヒロか。かくいう俺も突っ込むところだったが。
「見栄張るなよ東山君。俺も頑張るから少し頂戴」
動いた白井。結構な量の刺身をもって行った。
「ち、白井もきついはずなのに、俺だけ無傷って訳にゃ行かねえか」
トーゴーも動く。そしてこれで刺身終了!
「もう無いだろ?無いと言ってくれ」
誰かとは言わんが。つうか全員同じ気持ちだからだが、寧ろ懇願するように。
「……おそまつ様」
「「「「やったー!!!終わったー!!!」」」」
食い終えて万歳三唱。そこまでしなけりゃならんのか?が正直な感想だが、好意は無碍にしてはいけない。お残しは駄目。絶対。
食休み宜しく、ぶっ倒れる面々。お残ししない結果だ。まあ、詰めて持ち帰るのは大目に見てもらおう。
「ダーリン、今日は素直にお家に帰るね。流石に疲れちゃったし、ちょっとゆっくりしたいから」
「無理すんな。常に」
暗に泊まると駄々をこねるなと言った。お前忙しいだろ?常にって意味だ。
「河内君も素直に帰るのよ。緒方君の家に泊まろうとせずに」
「そりゃそのつもりだよ。魚のフライ持って行かなきゃいけねえし、何より明日は学校だし」
流石の河内も俺ん家に来るとは思っちゃいなかったようだな。安心安心。
「つうかここでお開きだろ。電車もまだ動いているし」
頷く女子達。電車組だって事だ。
「んじゃ悪いが、俺はお先だ。明日早いから」
松田が根性で立った。自分の小鉢の中身の容器を持って。
「じゃあ俺も帰る。兵藤、試合絶対にしよう」
「おう赤城、楽しみにしているぜ」
松田と赤城か帰っていく。送っていくと倉敷さんを伴って。
「ああ、やっぱ倉敷羨ましい……」
「赤城なんてどうだ?いい奴ではあるぞ」
「遠いし顔がね」
距離と顔の問題での却下となった。鮎川さん本気で彼氏欲しいのかな?本気なら多少は妥協してもいいようなものだろうが。
「鮎川さん彼氏欲しいの?友達紹介しようか?逆に北商の男子紹介してくれたら有難いけど」
よしこちゃんが鮎川さんに進言した。これは思わぬ展開だ!
「マジ!?顔は!?性格は!?」
「そこは会って判断してくれないと」
「そ、そうだよね。じゃあ、えっと、どうしようか……」
「ライン交換しようか?」
「うん!」
よしこちゃんと鮎川さんが連絡先の交換をする。これでうまくいってくれれば俺の出る幕は無くなる。
だからこれで決まれ!!
「っし、綾子、帰るぞ」
「え?もう?」
「何ならお前だけでも残っていいぞ。そん代わり電車で帰る事になるが」
「行くよ行く!じゃあねみんな!」
黒木さん、置いて行かれそうになって慌てて立った。
「おうそうだ槇原。今回のイベの反省会、改めて打ち上げやるんだろ?」
「うん。そのつもりだけど」
「……普通の店でやってくれ。マジで」
大量の八宝菜の容器を掲げながら。遥香、苦笑いで頷く。
「じゃあ俺も帰るか。いつき、送ってくぞ」
「うん。じゃあまたね」
児島さんもみんなに手を振りながら帰って行った。こんな感じでみんな家に帰って行った。
麻美はよしこちゃんと一緒に帰った。と言う事は、俺とヒロのみ。
「お前ちゃんと焼肉持ってけよ」
「おう。お前の容器の山見たらいいやとはとても言えねえし」
実際俺かご借りたからな。袋じゃ心ともない容器のようだから。
「しかし麻美の奴、俺にこんだけ押し付けやがって……」
「まあ、日向が発端だよな。だけどそれでいいと思うが」
なんだよそれ?麻美が俺に押し付けてよかったってのは?
「お前を弄れんのは日向も可能だってこったよ。植木の緊張もほぐれただろ」
いや?みんなに結構弄られていたような気がするが。植木君はそもそも緊張なんかしていないだろ。
「お前焼肉食うの、やっぱり」
「ああ、明日の飯になるだろうよ。親父やお袋も食うだろうが、それでも残りそうだよな。お前の場合は完ぺきに残っちゃうな」
かごの中身を見てそう言う。間違いなく残る事確実だ。
「だけど、俺達はまだましな方だろ。木村と大雅なんて汁出るタイプだからな」
「ああ、持っていく途中、大惨事になりそうだよな。八宝菜と煮魚」
俺はトンカラ、フライドポテト、大学芋と乾いているタイプだから中身ひっくり返してもそんなに参事になる事はないが、八宝菜と煮魚はヤバい。
「焼肉もやべえが、奴等ほどじゃねえし。まあ良かった。生駒は天ぷらだよな?あれも良かったんじゃねえか?」
「河内は魚のフライだしな。まあ、よかった方だな」
八宝菜と煮魚に比べれば天国もいい所だろ。俺は量が半端じゃねーけども。
「松田って自分と倉敷さんの分持ち帰ったよな」
「ああ、ありゃいい手だが、あの店ではあんまやめといた方がいいと思う」
俺もそう思ったので頷いた。店長の好意だし、食ってくれるのを喜ぶタイプだし。
「松田は初めてだから許されたんだろうけど、俺達は特に絶対にしちゃだめだ」
「サービス無くなるかもしんねえからな」
ヒロの場合それが本音か。確かにそれも有り得るが。
「しかし、女子にも同じ量やるのはちょっとな。考えてくれてもいいもんだが」
「春日さんだったら食べちゃうからだろ。春日さん基準で考えちゃってんだよ。俺達の負担がデカくなっていくだけだと言うのに」
同時に溜息をつく俺達。波崎さんの食べるタイプだとは言え、流石にあの量はちょっとな。倉敷さんですら無理だったんだし。
「あ、そう言えば、お金払ってないけど……」
「そうだな?あれ?明日払えばいいのか?それとも運営で出したのか?」
「それ明日聞いてみようぜ。流石に店長がただで食べさした訳じゃねーんだろうし」
「そうだな。改めての打ち上げどうする?」
「行くしかねーだろ。俺とお前ファイナリストだし」
「だけどあの人数、どこでどうやって打ち上げすんだろうな?」
そんな話をしながら帰路に就いた。試合のダメージや疲れもそうだが、胃の疲れもパねえ。その状態で明日のロードワーク行くのだろうか?とか思いながら。
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