感覚

歩く道すがら梅を見る

電車の風景から梅を見る

もうすぐ春というよりも重く

春を越せない人がいる

その人は、外を出る度に

「梅が咲いている。早く春になれば暖かいのに」と

言う人だったから、春を感じられないのが

少し寂しく思う

毎年感じていた春をあの人は感じられない

もう感覚さえも思考も奪われて

死を待つ身体。春を迎えられぬ身体

悲しいよりも虚しく病室に縛られて

窓から見る春なんて一つもありはしない

見る気力さえない

数えるはカレンダーの数字だけ

それさえも分からなくなるだろう

病室には生け花を飾ることさえできない

あの部屋に春は来ない

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