桜は散りゆき、水面に踊る

浦町 くじら

chapter. 1

プロローグ

ただ純粋に、君の横顔が綺麗だと思った。

通学途中に流れる、小さな小川の 小さな橋。


桜が春の風に舞い、長く美しい髪がたなびく。


顔にかかる後ろ髪を払うその仕草に、

僕はどうしようもなく目を奪われた。


身体は意思と反して、まるでその場に縫い付けられたかのように動かない。


視線の先のそれに、僕はただ見惚れていた。


この心象を何かに例えるとするなら、ひとつの美術作品でも見ている時のような感覚に近い。


俗に言う一目惚れ……というやつなのだろう。

だとしたら、随分と漫画じみた展開だな。


そんなことを思いながら橋の上に立ち止まる、

名前すら知らない彼女を見つめていると。



「……?」


「……あ」



ばちんと音が鳴りそうな勢いで、

不意に目が合ってしまった。







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