異世界転生しても社畜は安らぎを得たい

牧野 麻也

第1話 社畜は今日も徹夜でした。

 ──おめでとう。

 辛い世界を逃れて、お前は世界で類を見ない力を手にし

 異世界を救うのだ──


 日本の他の社畜と同様に、何度目かの徹夜明け。

 いつも通り始業ベルギリギリに出社してきた新入社員の女の子に、『なんか臭くないですか?』と怪訝な顔して言われた日。

 今まで是が非でも帰宅を許さなかった課長が、あっけなく帰宅命令を出した。


 風呂入ったら速攻で戻ってこいよ。


 寝るなって事っすか。

 もう何徹したか分かんないっすけど。


 そう言ったら(頭に思ってただけのつもりが、口から駄々漏れてた)、

 さも呆れたかのような顔して『仮眠とってただろ』だと。


 おいおい。

 二四時間時間で三十分の睡眠を二回とっただけで生きていけたら『睡眠不足』なんて日本語存在しねぇよ。


 と、思っても、もう言い返す気力すらなく。


 目眩と吐き気が止まらない頭を抱えて、フラフラと地元の道を歩いていたら。


 例の如く。

 トラックに轢かれた。


 正確には『轢かれた』んじゃない。

 目眩でヨロケて車道に倒れ込んだだけだ。

 運悪くそこにトラックが来てしまっただけ──

 トラックの運転手さんゴメンなさい。


 激しい急ブレーキ音と、全身に満遍なくかかった猛烈な圧力。


 その瞬間。


 目の前が真っ白になり──


 さっきのふざけた声が聞こえた。

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