第3話 vs 才女×天然

「うん?堤じゃねぇか」

「あ、ホントだ~!お~い、堤さ~ん!」

「・・・ん」


才女・宇羅明美&天然・江口沙樹。


「何してんだ?」

「ちょっと散歩」


個人的に関係が気になっていた二人。周りから見れば、いつもいっしょにいる仲が良い友達って感じなんだけど、私は以前、宇羅さんの相談を受けた事がある。江口さんの人を弄ぶ天然っぷりが、どうもストレスだ、っていうものだったんだけど・・・。まぁ、私も江口さんに振り回されたから、気持ちはよく分かる。


「もし暇ならいっしょにショッピングモールにでも行かねぇか?」

「あ、私も堤さんと行きた~い!」

「まぁ、いいけど・・・」

普段、宇羅さんと江口さんってどんな会話してるんだろう、って知りたかったし。


「新しい服でも買いに行こう、ってなってね~!」

「ま、あたしはそんな気乗りしてねぇが、夏休みだからな・・・。新しい服でも持っておくのもいいか、と思ってな」

「なるほどね、服、か・・・」

私もそろそろ買おうかな・・・。

「でも私、最近金欠でね~。お金溜めないとなぁ、って思ってて~」

・・・出た。この流れはどうするんだろ・・・。

「ねぇ、明美!お願いが・・・」

「おごらねぇからな」

「けち~」

すぐ断ったね・・・。多分、何回も言われてるんだろうな・・・。


「そんなに金が欲しいのなら、自分に生命保険かけて上手いこと車にはねられろ、あわよくば死ね」


いや、きっつっ!!え、宇羅さん!?急にきついこと言ってるよ!?

「無理だよ~、わたしスタントマンじゃないし~」

そして江口さんも何事もなく返すの!?

「ちょ、ちょっと宇羅さん!」

私は思わず小声で話しかける。

「もう少し言い方っていうものがあるんじゃ・・・」

「あ、堤もそう思うか・・・?だよな・・・、はぁ、あたしも駄目だよな・・・」

「そうそう、いらってするとしても、もうちょっと・・・」

「やっぱ、もう少し強く言うべきだよな・・・」

「えっ!?」

「どうしても言いすぎは良くない、って思ってしまってな・・・。あたしもついセーブしてしまうもんな・・・」

「いやいやいや、あれで!?あれで抑え気味なわけ!?」

もうあれ最上級の攻撃じゃないの!?え、この二人いつもこんな会話してるってことは、前に私がした、二人の仲を裂いちゃいけないもんなぁ、って思った気遣いはなんだったわけ!?っていうか、宇羅さん全然負けてないじゃん!江口さんと対等にやりあってるじゃん!


「ちょっと~、二人でなにひそひそ話してるの~?」

「いや、どっかの『江』から始まって『樹』で終わる江口沙なんちゃらってやつが空気読めなくて鬱陶しいってハナシだよ。な、堤」

「え、あ、いや・・・」

「あぁ、だよね~、空気が読めない人っているよね~、自分のことしか考えないっていうかさ~。私も苦手だな~、そういう人~」


お前だよっ!!


・・・って、言ってやりたい・・・!何で!?何であそこまで宇羅さんが言ってるのに分からないの!?もう天然というかただのバカだろ!!


「ま、保険が嫌なら、どっかのバイト先でさんざこき使われろ」

「ん~、でもそんなこと有り得ないよ?」

「な、何で・・・?」

自信満々に断言してるし・・・。

「だって、私がバイトしたら、店長が私のこと好きになっちゃうから。多分、全然仕事してなくても給料すぐあげてくれるだろうし」

腹立つ!!ちょっと可愛いからって!!

「それはねぇよ」

そうそう、言ってやって宇羅さん!!って、あれ、何で私、思いっきり江口さんの敵してるんだろ・・・。

「お前がバイトしたらバイト先の雰囲気が険悪になって会社がつぶれるだろ」

「いや、そこまで・・・」

・・・ない、と言い切れないところがあるのもまた凄いな・・・。

「あぁ!」

「え、どうしたの?」

急に謎解明、みたいに声を出して・・・。

「そっか。前、バイトしたところ、私が辞めてからす潰れてたんだよね~。それって私が関係ある、ってこと?」

「あるのかよ!!前科あるのかよ!!」

「・・・だとしたら、私ってそんな凄い力持ってるんだ~。照れるな~」

「いや、褒めてないし!」

「黙れ、害虫が」

害虫扱い!!宇羅さんは宇羅さんで辛辣!!

「害虫だって生きてるんだから。そんなこと言わないであげなよ~」

そしてまさかの害虫のフォロー!!


「とにかく~、私は今お金を持ってないからな~。あ、そうだ、堤さん!あのさ・・・」

「堤を巻き込むな。金が無いのは自業自得だ」

「違うよ~。服はまぁ何とかするとして、私、お腹すいちゃったからさ~」

そう言いながら、江口さんは露店のクレープ屋を指差す。

「買って?」

「違わないし!結局、お金ちょうだいってことだし!」

・・・ホント、一切悪びれていないところがすごいよね・・・。

「いいんだよ、堤、こんな奴の戯言に耳、貸さないで。そのまま餓死でもさせときゃいいんだ」

「え~やだよ~。餓死って地味だし、もっと違う死に方がいい~」

嫌って死ぬ方法に関して!?

「例えば~、魔王からの攻撃から仲間をかばって、仲間の腕の中で死ぬ、みたいな感じかな~」

ファンタジーだし!魔王どこから出て来たわけ?

「有り得ないことを言うな」

そうそう、もっと現実的に・・・。

「お前が人をかばうなんて自己犠牲できるわけねぇだろ」

「あ、それもそっか」

「そこ!?しかも本人認めちゃうの!?」

「ロマンチックに死にたいなら、魔法使いに蛙に変身させられて蛇に喰われろ」

「全然ロマンチックじゃない!!」

「あ、それもいいね~!」

「いいんかいっ!!」

「私、蛙好きだし、蛙になれるっていうのも面白いかも」

「でも蛇に食べられちゃうんでしょ!?」

「大丈夫!そんなときは明美が絶対に助けてきてくれるから。ね~!」

「・・・そうだな。お前があたし以外に殺されたらなんか癪だしな」

「だよね~!」

・・・この二人、どう考えても普通じゃないんだけど・・・。


「あ、あのさ・・・」

私は、どうしても気になる事を聞いた。

「なに~?」

「何だ?」

「二人、って、友達、なんだよね・・・?」

「ああ」

「うん!」


「「親友!」」


「あ、そうなのね・・・」

即答・・・。友情って、いろんな形があるってこと・・・なのか・・・?


to be continued...

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