第45話「許さない、絶対に」
「ここが白菱学園か」
梔子さんから誘われ、今日は先輩の通う白菱学園の文化祭へとやって来た。
「……それにしても、規模が違うな。なんというか、本当に祭りって感じだ」
ウチの学校と比べ、その規模の大きさに驚いてしまう。
確かに同じように僕らの学校も文化祭はあるけれど、せいぜいやることと言えばクラスごとに合唱を発表したり、各部の出し物を発表したりと、普通の学校がやっている内容と大して変わらない。
だが、ここ白菱学園は違った。
学生たちが切り盛りしている出店が立ち並ぶ校庭。向こうではステージが作られバンド演奏をやったりダンスの披露をしたり、校内でも手品や料理対決といったイベントが繰り広げられるなど、まさに『お祭り』状態である。
「まあ、白菱大学の文化祭と合同で開かれてるって話だし、凄いのも当然か……」
流石お金持ちの学校は違うな。
そんなことをぼんやりと頭に浮かべながら歩いていると。
「ん、ラインが来てる」
スマートフォンから、梔子先輩からのメッセージが届いたことを知らせる音が聞こえてきた。
『おはよう、優介君! もう学校には着いた?』
『おはようございます、先輩。ちょうど今着いたところですよ』
『了解、なら私もそっちに向かうね』
『いいんですか? クラスの方は』
『こっちもちょうどシフトが終わったところだから大丈夫だよ。それより、どこにいる?』
『えっと、今は──』
自分のいる現在地を確認しようと顔を上げた僕の目に映ったのは。
「優介、おはよう」
「お兄ちゃん、ここにいたんだ」
「……え、二人ともどうしてここに?」
なんと、朱莉と七海だった。
「どうしてって、普通に遊びに来ただけだけど?」
「遊びにって……えっと、もしかして二人で?」
「そうだよ。私と朱莉ちゃんの二人だけ」
「……そ、そうか」
未だに信じられないことだが、本当にこの二人は仲直りをしたのか。
この間、梔子先輩といた時に現れた時も、二人で喫茶店に来ていたと話をしていたけど……駄目だ、どうしてもこの二人が仲良く遊ぶなんて想像ができない!
「それより、お兄ちゃんはどうしてここに?」
「え、ああ。梔子先輩に誘われて……って、二人もあの時いたよね?」
「そっか、そういえばそんなこともあったね。すっかり忘れてた」
忘れてたって……そうなのか?
と、二人と会話をしていると、手に持っていたスマートフォンから着信音が流れ始めた。
電話……あ、梔子さん。
「ごめん、ちょっと電話に出るね」
「うん、別に良いよ」
朱莉から許可をもらい、通話ボタンを押す。
『もしもし、優介君? 急に連絡が途切れたから心配になって電話したんだけど、何かあった?』
「あ、すみません。実は今、朱莉と七海……この間先輩に挨拶をした、僕の妹と幼馴染と偶然出会いまして。ちょっと立ち話を」
『へえ、二人とも遊びに来てたんだ』
「ええ、そうみたいです」
『ふーん……ねえ優介君、お願いがあるんだけどいいかな?』
「お願い、ですか?」
『そこにいる朱莉ちゃんと七海ちゃん、二人を連れて私たちの教室まで来てくれる?』
「え? それは別に良いですけど……何か二人に用事でも?」
『いやー、せっかくだしみんなで一緒に文化祭を回りたいなと思うんだけど、なんだか私は二人から嫌われてるみたいだから直接誘わない方がいいかなぁって』
「嫌われてるって……そんなこと、無いと思いますけど」
無いとは思うけど、決してゼロではないというのが悲しいところ。
二人がもし以前のような感じだったら、間違いなく梔子先輩を敵視していたはずだ。
……ん? 敵視?
『とりあえず、二人に一緒に回りたいってことは内緒にして連れてきてよ! 実際顔を合わせて喋ったら、意外と仲良くなれるかもしれないし』
「分かりました。じゃあ、後ほど」
『うん、よろしくー』
そう言い、通話を切る。
今、先輩との会話で何か気づけそうな気がしたんだけど……駄目だ、これ以上は考えても浮かばなさそうだ。
それより今は……。
「二人とも、ちょっと時間ある?」
待たせている先輩のところへ急いで向かわないと。
*
『じゃあ、後ほど』
「うん、よろしくー」
そう言い、私──梔子楓は通話を切り、携帯をしまう。
「……予定通り行くかな」
一言、そう呟き、集合場所に指定した私の教室へと向かう。
そうして足取りを進めながら考えるのは、私の友達──静香のこと。
「許さない、絶対に」
そして、優介君の妹、並木朱莉のことであった。
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