第1話(番外編)キララとツクシ
(こちらのサイドストーリーは、番外編トキジとトシヤに登場する年也の娘、月野キララが登場するストーリーです。
また、主人公は本編に登場する谷口明子の娘の視点で作成しました。)
ずっと、女優になるのが夢だった。理由はママが長い間ずっとトップ女優として活躍していた姿を見てきたからというのもある。ママは、全身整形というだけではなくお祖父ちゃんの権力によるコネで女優に君臨してきたような人だ。
ママは元々天然の美女だった訳でもなかった事もあり、私はみにくいアヒルの子のような子供だった。周囲からは「お母さん、あんなに綺麗なのに」と散々言われてきた。
私がママのように芸能界に入りたいと言えば、アトピー塗れの顔じゃ芸能界なんて無理だと止められた。「お祖父ちゃん、お金も権力もあるならお祖父ちゃんの力で私をアイドルに出来るはずよ。ママのように」と言えば、ママは「もうお祖父ちゃんは、散々お金を私のメンテナンスに投資してしまったし、もう効くような権力もないのよ」と言った。
お祖父ちゃんは、数年前に宗教「ポクポン教」を作った。ママが芸能界で全盛期だった頃はポクポン教に入信する若者も増えており、経済効果もかなり高かったみたいだけど、数年前にお祖父ちゃんが横領事件と行った不祥事を起こしてしまい、ポクポン教は一気に不評に晒される事になった。
広告塔だったママも、ここにきて一気に過去の整形疑惑が週刊誌に載った事がキッカケで、殆どの仕事を干されるようになってしまった。「権力も夢も持て囃される時は良いけど、失えば一瞬よ」と、ママはポツリと呟いた。
それでも、私は夢は女優になる諦められなかった。私は、やがて誰にも内緒で家を出て上京したのだ。肌を綺麗にするために、何とかプロアクティブや、クレアラシルなど買っては試したし皮膚科も何度通ったことだろうか。それでも、全く私の皮膚は治らない。
芸能人は、まさに肌と顔が命だ。結局、この顔では芸能界どころかキャバクラ等の水商売も尽く落とされ続けた。何とかブス専激安ソープや、企画物のブス専マニア向けAVでバイトする事が出来たので、貯めたお金で、なんとか歯科矯正する事にした。
胸にも、シリコン入れて巨乳にさせ、目も蛆虫みたいな細い目から二重瞼に。だけど、肌だけはどんなに頑張っても無理だった。まさに私の肌は、「呪われた肌」だったのだ。
そして、どんなに整形してもブスはブスだった。この身体をどんだけ呪ったことだろうか。なぜ、神は私をここまで救い用のないブスにしたのか・・。
六畳一間のボロアパートで、何度も枕を濡らした。
何度もオーディションに足を運ぶが、面接どころか書類選考の時点で落とされた。
そんな私にも、やっと受かったオーディションがあった。「男女8人シェアハウス物語」という恋愛バラエティ番組。実際に男四人、女四人の男女が同じ家で一ヶ月暮らす・・・。
だけど、実際はヤラセ満載でこれから売り出したいタレントを売るためのナンチャッテ恋愛番組だったのだ。台本も渡された。
ワタシは、一番人気になる予定の高田君という男に、何度も告白しては振られ続けた上に、(設定では、100回ほどシツコくやってくださいと言われた。アドリブで、もれなくストーカーぽいこととか、キモイ告白沢山してくださいと言われた。)
これから売り出したい大本命の美人タレント「月野キララ」という女に、本命の高田君を奪われるという役どころだった。
は?なに?これ?ふざけんなって思った。それでも、汚れ役だったとしてもテレビに出れるということは、それだけで私にとってチャンスだった。
何としても、このチャンス絶対手に入れてやる。そして、この番組で強烈な印象を残して女優やバラエティアイドルへのステップアップするんだから!
しかし。撮影現場にいってビックリしたのは、月野キララと、私に対する待遇があまりにも違った事だった。
キララには、豪華な楽屋も、一個二千円位のロケ弁まである。
ヘア担当。メイク担当。ネイル担当など、沢山のスタッフに囲まれていた。
しかし、私には当然の事ながら何もなかったのだ同じ事務所だというのに・・。同じ番組に出るのに、私には、ほぼノーギャラに近い契約だったのに対し、月野キララには1クール100万円貰えてると聞いた。
しかも、キララは他の番組と掛持ちしており、絶対に遅刻してくる。ワタシはどんなに早くついても、結局キララが来るまで待たされるのだった。
しかも遅れてくるくせに悪びれる様子もなく、
「あー、今日も雑誌の撮影マジ疲れるんだけどー。あのカメラマン最悪ー。何回撮らせたら気が済むのよみたいな感じ!同じポーズばかり、長い時間写真撮るもんだから、右手がつっちゃったじゃないのよぉぉぉ!
腕が下手糞な奴には、もう写真撮らせたくないんだけど!」
と、マネージャーに文句ばかり。あんな女に関わるとロクな事ないだろうな。
この番組終わったら、さっさとこの事務所とも縁を切りたいなぁ。なんて、思っていたら。
「あー、あんたさー。谷口ツクシさんだよね?私と同世代で、同じ事務所って聞いてたんだけどー。
へーえ。(舐め回すように、ツクシの全身を見る)
あんたさー。どうしてテレビに出ようと思ったの?
その容姿で?あなた。恥ずかしくないの?
私がもし貴方なら・・むーーりーー!無理ゲー!アハハハー!」
カッチーンと来た。キララって女、私の事思い切りバカにしてきた。
確かに、貴方は人よりずっと美人かもしれない。けど、心の荒んだ女なんて!そのうち、どうせ生意気祟って干されるわよ!
ワタシが、キララを無視すると、
「うわー。うわー。うわー。
なに?無視すんの?この私を?へーえ。あんたさー。私のキャリア知ってるの?
芸能界の裏と、一杯繋がってるの知らないの?
私を、この世界で敵に回すとさー。
仕事なんて来ないんだからぁー。
あー、でもその容姿じゃ最初から無理よねぇー。アハハハ!」
高らかに笑うキララ。ほんと、嫌な女。いくら仕事だからって。なんで、あんな女の引き立て役を私がやらないといけないのよ。腑が煮え繰り返るとは、まさにこの事なのだろうか。
ほんと、この女を懲らしめてやりたい。心の底から、そう思った。
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