第5話 小春と小夏
その後、何故か俺は事の流れでカズ叔父さんの家でご飯を食べる事になった。ご飯は、カズ叔父さんが育てた姉妹の一人、小夏という女が作ってくれたようだ。
「あいつ、あんまり愛想良くしないんだけどさ。本当は、人が家に来てくれるのが凄く嬉しいんだよ。なかなか素直じゃないから、上手く伝わらないかもしれないけど、すまんな。」と、カズ叔父さんが耳元でボソッと囁いてきた。正直、俺自身も人とコミュニケーション取るの苦手だし、元々友達も少ない。
その前に、この子に対して別に何も思っていないので、どんな態度で接しられてもどうでもいいと思っていたが、カズ叔父さんは気を遣ってきた。
「あの・・姉妹って聞いたんですけど・・。あの子は、姉の方ですか?もう一人は・・?」と俺が尋ねると、カズ叔父さんは
「あ、ああ。小夏は妹の方でね。もう一人、姉に小春ってのがいるんだよ。
まあ、ここだけの話。
小夏も美人だが、小春はそりゃーもう絶世の美女でね。で、何やっても天才的だったの。
どちらかというと、小夏は姉みたいに何でもすぐに出来る方じゃなくて。ただ、凄い頑張り屋でさ。姉に負けないように、いつも必死でついてきてたよ。誰にも内緒で、こっそりコツコツ練習するタイプかな。
ただ、結局何しても姉と比べられてしまう。姉は天才だから、努力しなくてもすぐに出来ちゃうんだよね。小夏は、そんな姉を見てはガクッと落ち込む事もあってさ。
そんな背景もあって、少し卑屈というか。捻くれた部分があるんだ・・。
ただ、完璧な人間って早々いなくてさ。
姉の小春には、ひとつ問題点があって。
天真爛漫すぎて、思い立ったらすぐ行動。んで、飽きたら直ぐ辞めるのよ。
昔は、妖精になりたいとか、アイドルになりたいとか、マザーテレサみたいになりたいから、とりあえず看護婦になりたいとか、外国の金持ちと結婚して、ハーフの可愛い子供産んで高級外車乗り回して札束風呂入りたいとか、宇宙飛行士になって、月でかぐや姫に会って姫と美貌対決したいとか。
訳のわからない事を言っては、周囲を困らせて突然何処かへ姿を消したりするの。
今だって、「私、ハリウッドでミュージカルスターになりたいの!日本の芸能界はもう、アンドロイド社会に支配されてるから駄目!」とか言って、突然どっか家出したのよ。
何時ものことだし、金も無い。どうせ直ぐ帰ってくるだろうと思ってたから止めなかったけど、そしたら本当に帰って来なかったの・・。
で、最近拾ったテレビに発電機で電気通して見てみたら、いきなり小春が出てきてさ!なんでも、チョイ役なんだけど!でも、ビックリしたのよ!」と、カズ叔父さんは目を丸くして言ったので
俺は思わず「ええ!本当ですか?!何の役してたんですか?!やっぱりハリウッドなんですかっ?!」と言ったら、
「いや・・ハリウッドというか・・
火曜サスペンス劇場の主演のアンドロイド俳優、安藤健二に「あのう、此処に行きたいんですけど、何処に行ったらいいですか?」と尋ねられたら、「とりあえず、右を左折して真っ直ぐいったらいいんじゃないすかね?」って言うJK役だったのよ。
本当、これこそまさにアンドロイド俳優使えばいいんじゃね?と思ったけどさ。
今は、ローコストでドラマ作る時代じゃん?
エキストラみたいな金にならない仕事には、金のかからない人間を使い、主演俳優など金のかかる所には、アンドロイド俳優を使って経費を抑えるんだ。
この無駄のないドラマ制作の流れを産んだのは、
まぁ世界にアンドロイド社会を開発したオメェの親父の功績がデカイんだけどね。
ただ、俺的にはつまんねぇ時代に年々なってきたなって感じ?
そして、オメェの親父は。つまんねぇアンドロイド兵士を大量に生産し、世界に送り込んで、戦争を起こしてしまった・・。
結局、人間が戦わない時代になったからいいという政治家もいるが、地球は結局自然を破壊されている訳だから絶対に怒ってると思うんだ。
度重なる戦争を繰り返し、大気汚染、自然破壊を続ける。
だから、地球は怒って何度も地震を起こして警告してるんじゃないかって思ったの。俺。
俺も、実は契約社員ながらロボットの開発部門に一緒にいたんだ・・。
ロボット開発してた頃は楽しかったけど、まさかこの技術がこんな恐ろしい展開を迎えていくなんて・・。」と言って、カズ叔父さんは「ふぅ」と溜息をついた。
カズ叔父さんは、親父の会社でロボット開発の研究の手助けに派遣されていた頃があったそうだ。元々頭脳は優秀だったカズ叔父さんの発明で、ヒト型ロボットが開発された。
しかし、「なんで、ヒト型ロボットなのに、こんなブサイクなのばかり作るんだよ!」と親父が怒り出して、失敗作となったんだ。
しかし、カズ叔父さんは作ってる途中から「最初は、美人なロボット作りたいと思ったけどさー、顔に愛嬌があったら面白いかなぁと思って・・・って、ねえ?面白くない?」と言って、ケラケラ笑っていたそうだ。
やがて、その一年後に本格的なヒト型アンドロイドを開発。
しかし、カズ叔父さんはその特許を俺の親父に騙されて売ってしまった。
それ所か、「戦争ビジネス」に加担を始めた親父に対して怒ったカズ叔父さんは、
「そんな事をするために、俺はお前にこんな技術を考えたんじゃない。人を殺めるために俺はこんな技術を作ったんじゃないんだよ・・・。
俺は、ただアンドロイドを制作する技術が好きで好きで・・・。ただそれだけだったんだ。
夢中になって開発に取り組んできたことが、まさかこんな形で使われるなんて俺、辛いんだよ。こんな事はもう辞めよう。」と、何度も家に訪問して説得に出かけたそうだ。
その頃、俺は時々カズ叔父さんに遊んで貰っていたんだと思う。
しかし、親父は「何を綺麗事を言っているのだ。
この技術は、今や世界産業になり歴史を動かすことになるかもしれないんだ。勿論、この技術が発達すれば想像もつかないような莫大なお金が動くようになる。
今こそ、お前の力が必要だ。カズ、力を貸してくれ。一緒にこのビジネスを成功させていこう」と声をかけた。
俺は、その事を今日初めてカズ叔父さんから聞いた。
そして、カズ叔父さんは「このままだと、オメェは人殺しビジネスに加担していくことになる・・。
いくら金儲けとはいえ、悪魔に魂売ってまでして豪華な暮らししても幸せになれると思うか?人にしたことは、自分に必ず返ってくるんだよ。
人を不幸にするための仕事に加担すれば、何十倍にもなって自分自身が苦しめられる事になる。
俺は、自分が開発した技術が戦争に利用されるかもしれない事を知って恐ろしくなったんだ。お前の親父が考えていることは、恐らくお前が想像している以上にとんでもない事になると思う。
お前は、あの家の跡取りという位置づけだからいずれ親父が行おうとしている事を引き継がなければならないかもしれない。
しかし、親父が考えていることはアンドロイドを使ってとんでもなく恐ろしい事をしようとしている事なんだ。お前に意思を持たせようとしないのも、お前が有無を言わさず自分の悪事に加担させる為だと思うんだ。
オメェ、あの家から逃げた方がいい。結局は、あの親父に利用されるだけだ!
何でもいいから、夢を持て。そして、自分の為に一生懸命生きな。」と、言った。
「あの家から離れた方がいい。
好きなことを見つけて、一生懸命生きろ」
そんな事を言われても。正直、何を今更という感覚だった。
昔から、カメラマンになりたいという願望があっても親父に潰されてきた。幼き頃から、パソコンやアンドロイド製作の英才教育を受けてきた。そして、社会情勢についても・・。
アンドロイドを何故作って、戦地に送り込むのか。それは、「人が死ぬ事を減らす為」だと教育された。アンドロイド兵士を大量に作ることで、万が一戦争が起きたとしても人間が兵隊に出る必要はなくなるのだ。そして、世界各地で既に拡大されていったテロから守る為だと言った。
しかし、三谷コーポレーションの裏切り者が、テロの捕虜となり技術を渡してしまい、更に窮地に追いやられる結果となってしまったのだ。
今では、世界各地でアンドロイドVSアンドロイドの戦いが繰り広げられるようになった。
戦争が増えるたびに。地震や津波、火山は増えた。人間は、益々の減少を辿った。
それを補充するかのように、アンドロイド技術が駆使されていく・・。
今では、人間よりアンドロイドの方が多くなってしまった。
段々、俺が幼き頃から教育されてきた事は真実なのかと疑問に思うようになった。
「夢なんて、昔からずっと持ってました。
俺、カメラマンに昔からなりたかったんです。
だから、いつも親父に隠れてこっそりカメラ抱えては写真撮ってたんです。
コンテストに応募して、大賞も取りました。
僕は、素直に嬉しくて。
それでも、親父はカンカンに怒りました。
勝手な事をするな。
勝手に夢を持つなと。
お前には、既に俺が決めた未来が全部あるんだから勝手なことしても意味ないぞって。
夢なんて、持っても無駄だと思うしかありませんでした。」
俺が溜息混じりに答えると、向こうの方から小夏が、
「えっ?どうしてなの?
そんなの、おかしいじゃない!
写真撮る事なんて、何もおかしくないし。
大賞とれるなんて、素晴らしいことじゃないの!
トシ君のお父さん、絶対おかしいよ!」
と、突然叫んだかと思えば「あっ」と言う顔をして、何事もなかったかのように料理を続けた。
カズ叔父さんが、
「あいつ、ああ見えて。
結構、感情的な所あんだよ。
でも恥ずかしがりやだから、なかなか見せないんだけど。
オメェみたいな初対面の人に、あいつ感情的になったの。
もしかして、初めてじゃねぇか。」
と言って「ハハハ」と高笑いした。
からかう叔父さんに、
「違うわよ。もぉ。勝手な事言わないで。」と言って頬を膨らます仕草が可愛かった。
滅多に女性を可愛いと思う事なんて無かったけど、人ってこういう時に女性を可愛いと思うのだろうか?
それとも、俺が少し変態嗜好なのだろうか?
好意を持たれても、女の裸(ただし、童貞だから写真しか見たことない)見ても何とも思って来なかったが、
こんな些細な所で、人は女を感じたりするんだろうかと。
ふと気がつくと、先程からずっと料理を作っていた小夏をジロジロ眺めていた。
小夏から「何よ」と睨まれ「あの家から離れた方がいい。
好きなことを見つけて、一生懸命生きろ」
そんな事を言われても・・・。
正直、今更という感覚だった。
昔から、カメラマンになりたいという願望があっても親父に潰されてきた。
幼き頃から、パソコンやアンドロイド製作の英才教育を受けてきた。
そして、社会情勢についても・・。
大量のアンドロイドを何故作って、戦地に送り込むのか。
それは、「人が死ぬ事を減らす為」だと教育された。
世界各地で既に拡大されていったテロから守る為だと言った。
しかし、三谷コーポレーションの裏切り者が、テロの捕虜となり技術を渡してしまい、更に窮地に追いやられる結果となってしまったのだ。
今では、世界各地でアンドロイドVSアンドロイドの戦いが繰り広げられるようになった。
戦争が増えるたびに。
地震や津波、火山は増えた。
人間は、益々の減少を辿った。
それを補充するかのように、アンドロイド技術が駆使されていく・・。
今では、人間よりアンドロイドの方が多くなってしまった。
段々、俺が幼き頃から教育されてきた事は真実なのかと疑問に思うようになった。
「夢なんて、昔から持ってました。
俺、カメラマンに昔からなりたくて。
だから、いつも親父に隠れてこっそりカメラ抱えては写真撮ってたんです。
コンテストに応募して、大賞も取りました。
僕は、素直に嬉しくて。
それでも、親父はカンカンに怒りました。
勝手な事をするな。勝手に夢を持つなと。お前は、何も考えなくていいって言われ続けてきました。俺が、お前の人生を成功に導くためのレールは作るからって。
だから、夢なんて持っても無駄だと思うしかありませんでした。」
俺が溜息混じりに答えると、向こうの方から小夏が、
「えっ?どうしてなの?
そんなの、おかしいじゃない!
写真撮る事なんて、何もおかしくないし。
大賞とれるなんて、素晴らしいことじゃないの!
トシ君のお父さん、絶対おかしいよ!」
と、突然叫んだかと思えば「あっ」と言う顔をして、何事もなかったかのように料理を続けた。
カズ叔父さんが、
「あいつ、ああ見えて、結構感情的な所あんだよ。
でも恥ずかしがりやだから、なかなか見せないんだけど。
オメェみたいな初対面の人に、あいつ感情的になったの。
もしかして、初めてじゃねぇか。」
と言って「ハハハ」と高笑いした。
からかう叔父さんに、
「違うわよ。もぉ。勝手な事言わないで。」と言って頬を膨らます仕草が可愛かった。
滅多に女性を可愛いと思う事なんて無かったけど、人ってこういう時に女性を可愛いと思うのだろうか?
それとも、俺が少し変態嗜好なのだろうか?
好意を持たれても、女の裸(ただし、童貞だから写真しか見たことない)見ても何とも思って来なかったが、
こんな些細な所で、人は女を感じたりするんだろうかと。
ふと気がつくと、先程からずっと料理を作っていた小夏をジロジロ眺めていた。
小夏から「何よ」と睨まれた。
「あ、ごめんなさい。何でも・・」と、しどろもどろになっていると、
「ハイ。さっさと食べて。
すぐ冷めちゃうから。」
と言われて料理を差し出されたのだが、
「うわ・・な、なんなんすか・・・。これ・・・なんか料理っていうか、生ゴミの臭いするんですけど・・・。あのう、何入ってるんですか・・・。」
と、言って思わず鼻を摘まむと、
「はぁ?何なのよ!人が一生懸命作った料理にケチつける気?
私たち、食材はバイト先のスーパーの見切り品タダで貰ってきてるだけだし、
茸も野菜も、そこらへんで植えて生えてきた天然の物だし、全然おかしなものなんて入ってないわよ!
何よ!もしかして、私たちが貧乏でホームレス育ちだからって!
あんた、ちょっとお坊ちゃんだから馬鹿にしてるんでしょ!なんかもう、腹立ってきた!
そんなに嫌なら食べなくていいし!帰って
いいし!」
と言って、突然怒り出した。
隣でカズ叔父さんが、
「ワハハ。そんな事で怒ってるよー、マジ面白えぇー。」って笑ってて止めようともしない。
ねえ。なんなの。この人たち?やっぱり、ろくでもないもの食べてると、DQNになってゆくのかもしれない。
多分知らぬ間に、「ワライダケ」とかこの叔父さん食べてるのかも知れないし、娘は、とりあえずメンヘラなんだろう。
一瞬でも、此処にきて少し楽しいと思ってしまった俺は間違いだったのだろうか。
いつも家で食べてる、
「フォアグラのステーキにキャビアを添えて」や、「ツバメの巣のスッポンスープ煮」が段々恋しくなってきた。
ただ、いつも一人でゆっくり食べていたから少し寂しいなとは思っていたけど。
でも、こういうのも無いものねだりって奴なのかもしれない。
やがて、背後から人影を感じた。
「だれ?あんた?」
と、オカッパ頭で切れ長の瞳の女に睨まれた。
白くて陶器のような肌。
長くて美しい睫毛から覗くキラキラした、つぶらな奥二重の瞳。
「こ、小春お姉ちゃん!」
と、小夏が叫んだ。
「お、おい。小春!帰ってきたのか?!」
と、カズ叔父さんが続けた。
「ちょっと。どいてくれない?邪魔なんだけど。」
と、小春と呼ばれた女は俺に言い放った。
生まれて初めて、俺が女に命令された瞬間だった。
すぐ冷めちゃうから。」
と言われて料理を差し出されたのだが、
「うわ・・な、なんなんすか・・これ・・なんか料理、生ゴミの臭いするんですけど・・あのう、何入って・・」
と、言って思わず鼻を摘まむと、
「はぁ?何なのよ!人が一生懸命作った料理にケチつける気?
私たち、食材はバイト先のスーパーの見切り品タダで貰ってきてるだけだし、
茸も野菜も、そこらへんで植えて生えてきた天然の物だし、
全然おかしなものなんて入ってないわよ!
何よ!もしかして、私たちが貧乏でホームレス育ちだからって!
あんた、ちょっとお坊ちゃんだから馬鹿にしてるんでしょ!
なんかもう、腹立ってきた!
そんなに嫌なら食べなくていいし!帰って
いいし!」
と言って、突然怒り出した。
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